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セカイの呪いをこの身に  作者: 早変わり
2/2

悪夢

「先生…彼は、目が覚めていましたか?」

 その問に、先生は首を振った。

 あの大地震から数ヶ月がたった。先に目が覚めた私たちは目の前で号泣していたコスプレをするおじいさんたちにとても歓迎されていた。

 ファンタジーゲームのCMで見たことがある鎧や、ちらりと見たことがあるヨーロッパなどのほうの昔の町娘たちのような服。どれもコスプレのように見えたが、その生地は結構頑丈であった。先生にあうサイズのものは数が少なく、それを知ったおじさんは服を手配させたようで、本当に申し訳なかった。

 いかにもここのメイドですと全身から伝えているような方達から着付けてもらい、全員が目覚めるまでしばらく、勉強をさせてもらおうとこの建物の一角にある「書庫」に出入りさせてもらった。


 この世界で目覚めて数日。わかったことがいくつかある。まず目の前で号泣していたコスプレたちは実は魔導師という職業のものと大臣だったようなのだ。

 魔術師とは、この世界では「科学のように規則的に並んだ理を、何らかの方法で用いり物資を召喚または移動させることができる人々がなれる職業」らしいのだ。土地によって形が違うのだが、ここの国の魔術師は主に魔術陣を使うようだ。

 魔術陣とは、答えが書かれていない長い問題式の事を言うらしい。答えイコール結果なんだとか。科学と似ている気がする。

 ちなみに、魔術陣を使わずに杖やなにかものをつかって攻撃的魔法や治癒的魔法を使うものを「魔導師」といい、その中で特化した魔法が攻撃的か治癒的かで「魔法使い」や「僧侶」に分けられる。発動させるのに使うものが杖ならば上記のように呼ばれるらしいが、それが剣だったり盾だったりするだけで「魔剣師」などいろいろ呼ばれる。めんどくさい。

日本語では魔術師と魔導師という言葉はよく似ているため、魔術師を「エルト」、魔導師を「セプト」と区別しているようだ。

 そしてものを一切使わずに魔法が発動できるものを「魔人」といい、いろいろな意味で人間とは呼べないらしい。そして多くは謎に包まれている

 そして私たちが召喚されたここは「第4館特殊知的生命体召喚施設」といい、他の館と比べると結構大きいらしいのだ。そして、現在ここは森の中であり人里から遠く離れたところらしい。

 この世界は私たちが住んでいた地球と似ていたようで、形は球体である。共通語は英語、もっとも難しいとされる言語の一つが日本語らしかった。

 なんでも、日本語は「神からの使い、天使様の世界の言葉」らしい。天使たちは英語やギリシアなどいろいろな言葉を話せるが、天界にいけばそれらは意味を成さず、全て日本語になると信じられている。

 神聖な言葉とされ、言語が生まれ世界大戦が一度終わりお互いの国が交流を持つまでのあいだ、ずっと日本語で話した「倭の国」に住む人々は「天使等が地上に舞い降り、人間に姿を変え人間とともに歩んだ地上の天界」と絶賛されていた。私からしてみれば何とも言えない気持ちだ。

 実際、倭国の平均寿命は100年を難なく越え、頭脳も運動も申し分ない。ほかの国と比べると2歩3歩どころではなく、5歩6歩も先を見据え歩いている国のようだ。載せられている本の挿絵には、画面越しで見たことのある東京とあまりかわらない街並みのようだが、心なしかすこし清潔でいて近代的だ。建物全面がモニターで、それは駅の天井からぶら下がっているモニターなんか比にならない。写真越しでもわかった。

 人物像は…綺麗だったら同じ日本人__多分同じ日本人__としてとても恥ずかしいので、惨めに感じる前にその本は元あった場所へ戻した。


 今のところ生徒52人先生1人がこの世界に召喚されたことがわかっている。合計53人のうち、大地震から約3ヶ月が経った現在意識が戻りご飯を自力で食べられるようになるまで現状を理解し受け止めようとしている者は43人。未だに「帰りたい」と嘆き自殺に走りそうな者は9人。目を覚まさないものが1人。

 それが彼…志乃崎ゆうだ。

 身長はクラスのなかで一番高いし、成績もクラスで上位といいほうだ。人付き合いが悪く一日をゲームで過ごしていると誰もが知っているのは、全身からの形容しがたいゲーム臭が漂うことと、休みはゲーム登校中も帰宅中もゲームをしていることからだ。目の下に隈を作らせて学校にくる彼は四六時中ずっと誰かを睨んでいるような気がして怖い。

 この世界に来て来てから2、3週間、目もさまず日に日にやつれていく彼。最初は睡眠不足からによるものだと思い、栄養不足で死亡は洒落にならないからとセプトの僧侶が彼についた。

 けれど次第に彼はうなされ、暴れだした。彼のためにと特別に設けられた部屋は毎日荒らされ、ついていた僧侶は回復しかできないからと1度怪我を負ってしまった。結界師などが四六時中交代で付くようになったが、なぜかそれを超えて日中構わず施設をゾンビのようにうろつき、それを見た生徒が目が覚めたと錯覚する。徘徊しては突然その場で倒れたり、その場の物を壊し自身の体を傷つけるような行為を睡眠中にする彼をみて、エルトたちから「夢界で何かが起こっているかもしれない」と一つの仮定をかけた。

 夢界。天界や魔界のようにいくつもの世界がぶどうのように一つの道で繋がれて、その道で行き来するものとは違う。私たちが今いる世界のように、1つの空間のようなのだが、その1つが数えられないほどいくつも構成され、それらはつながっていないのが夢界らしい。この世界から夢界へいける方法は様々であり、今わかっている方法以外でも何らかの拍子で行けることが分かっている。例に言えば、寝ていたり植物状態に落ちていたり、死亡したあと天界にいけずに夢界に落ちて彷徨ってしまうなどだ。


 彼をセプトたちに任せ、私たちがなぜ召喚されたのか、その理由を城の使いのものから話されることになった。


 ____


「まず君たちには、魔人という悪魔達を討伐してもらいたい。

 魔人とは、この知的生命体で溢れた世界”地界”で、魔術を扱う人族のそれら(・・・)の平均よりも50倍100倍も上の数値を計測器で叩き出す生命体のことを指す。それら(・・・)とは”一度に噴出できる魔力量”と”体内に蓄えることができる魔力量”と”魔法を発動させるまでの時間”を指す。

 わからないからと詳しく説明したいところだが、ここからは魔術に興味がないものにとっては本当にどうでもいいものなので割愛させてもらおう。

 魔人がこの50年で急激に増えたと伝えられた。魔人とは普通、人間から生まれるものとしても1000年に0,5ほどの確率でなる生まれながらの悪だ。そのものがこの50年間で2名生まれたと報告を受けた。しかも視野を広げて別の種族にも聞き取りをしたところ、やはりこの50年で少なからず1,2体は生まれたようだ。各種族の最大近代国で魔人の管理を行っていたが今から約10年前の10月10日に突如すべての魔人が姿を消した。各国へ要請を回し集まった人材は、合計およそ5万を越える軍隊と3万の魔術軍。この広い地界を捜索させるためにと向かわせたがそれのおよそ半数が帰らなかった。話を聞くと、ある1つの場所にいったものが帰ってこないことがわかった。この現状を見て国はある仮定を立てた。

 魔人たちはどこにいるかもわからない仲間と何らかの方法を使ってコミュニケーションを図った。そしてその10月10日にある場所へ向かい、集落を造った、と。これ以上人材を割くわけには行かず、だからといって魔人を倒せるほどの人材を今から探すか1から育てるか、どうやって見分けるのかなどとなると何年経つかわからない。そこで1つの希望を立てて我々は禁忌を犯した。それは君たちを召喚することである。


 今、君たちには大きな期待が掛かっている。多くの犠牲を払ったとしても召喚したものが60人にも満たない少数だったとは想定違いだが、能力値は魔人に近いものと診断で出た。

 今日から数年、君たちには成長してもらう。地理と魔術と体術、その他戦闘や野営やこの世界における人付き合いなどを徹底的に叩き込む。

 我々はとても必死だ。謎だらけの魔人がいつ強化された状態で集落を襲うかわからない。こちらは”世界”がかかっている!!人ごとであるのは分かっているが、全力で取り組んで欲しい!!」

 ___話は以上だ。

 そう言って、その人は去っていった。

 言葉も出ないまま、私はこれから起こる出来事に怯えた。



 クラスのみんなと先生でこれからのことを話した。

 もちろん、志乃崎ゆうはいない。

 ほとんどみんなが、何年の人生をここで無駄にしなければいけないのかと思っている人や、楽しいからいいやとか、無駄にしてもいいから親や他のクラスの友達に会いたいだとか、いろいろな意見で別れた。私は、まだ友達と痛かったなと思う。友達に別れを告げてから召喚されてもまだ遅くないと思ったからだ。

 脱走計画や乗っ取ろうかなどと意見が出たが、魔人という存在がこの世界を壊すというのだから、私たちがこの世界に来てしまった時点ですでに積んでいるのだ。従うしかない。

 いろいろと言い合いが起きたが、最終的には意見を交換しただけで現状も行動も話し合う前とあまり変わらなかった。言い合いを終わらせたのは先生だった。

「皆、環境が急に変わって、食べ物も寝る場所も土地も家族もいないから、ストレスが溜まっているのよ。そういうのはこういう時に発散させるのに限る。毎晩この時間帯にみんなで集まらない?そして言い合うのよ。とりあえず、もうおそいから皆寝ましょう。」

 控えめに手を鳴らす先生。私の目には疲れきった先生が見えた。

 きっと私もそうなんだろう。

 部屋から出て、自分の寝室に戻るとき、かならず彼の部屋を通らなければならない。私の部屋は一番端で、彼の部屋は手前にあるからだ。

 薄暗い部屋をカンテラで照らす。チリチリとコオロギのような音が外からなり、それを楽しんでいると、話し声のようなものが耳にはいった。

 ある部屋からだった。その部屋はドアが空いていて、中が見えていた。覗いてみると、そこには彼が、首に手を添え上半身をベットから起こし、ブツブツと呪いをかけているように何かを言っている。耳を澄ましても何を言っているかあまりわからない。

 相変わらず彼は目を閉じていた。こうなっていてもまだ睡眠状態と言われてしまうのだから不思議なものだ。最初、施設内を徘徊すると聞いたときは浮遊病かなにかだったのかなと思っていた。

でも歩いている時には何もないところでつまづいたり、壁にぶつかったりする。寝ていれば寝返りをするし、ひどい人はベットから落ちる。それを見ていて私は取り付かれているのではと何度も思った。足や腕を何度も手で擦っては喉に手を添え壁に顔の正面を向ける。彼についた人達が気づいて横にさせるまでずっとだ。彼に何か起きているとしか思えなかった。

ドアをきっちり閉めて、私は明日何をして過ごそうか考えながら自室で眠った。


_____


友人が私を起こしに来た。なんでも、朝会が行なわれるらしい。

朝会はこの世界に来て今まではなかった。集会でさえ昨夜初めて行われたくらいだ。

集会で話しそびれたことでもあったのだろうか。

開いているドアの隙間から彼を見る。上半身を起こすこともなく横になって寝ていた。

友人が急かすので急いで朝会が行なわれる食堂に向かった。

おそらく私が最後だったようで、私が椅子に座るとお城の使いの人が話し始めた。

「昨夜言い忘れていたが、本日から授業を取り付けた。突然のことでまだ心の準備が出来ていないだろうから、太陽が真上に上るときにまた呼びかけるので、そこで改めて詳しく話そうと思う。授業の内容は地理学 魔術学 体術学 文学 商業学そして戦闘実技だ。

商業学は計算と会話術、あと多少の科学を学んでもらう。一番最後の戦闘実技はチェスなどを使って戦場をどう切り抜けるか、実際に野生の妖精(モンスター)を使って戦場の辛さを理解してもらう。その他は聞いてそのままだ。」

体術と戦実の違いが少ししかないように聞こえるのは気のせいだろうか。

それよりも、先生は今「モンスター」と言いました…?

「すでにそれらを教える先生は来ている。先生は全員で14人だ。そして君たち60人にも満たない人数を2つに割り、別々に学んでもらう。

一応言っておくが、わざと”人族外”の先生を呼んだ。人間でないからと見下したりすれば痛い目にあう。先生だと思って接するんだ。」

人間ではない…?

パチンと指を鳴らすと、14…人の人とは到底言えない”先生達”が前に出た。

白目がない真緑の溢れんばかりの大きい目をし、背中にプラスチックに見えなくもない薄い焦げ茶色の羽を持った人。頭から上に伸びる触覚をピコピコと揺らし手から足になにか薄い膜がある。全身に黒い毛を生やし、頭に扇風機のように丸い耳が2つついた大柄の男。耳がダンボのように大きく広がり身長は3メートルもあるのではと思ってしまうほどに長い人。個性豊かな先生たちが14人そこにいた。

「彼らの紹介はその授業で聞いてくれ。それでは、お昼に」

そう言って先生たちは去った。

私はおそらく、ここで初めて「ここは異世界なのだ」と理解した。

一体どれほどハードな授業なのだろうかと想像すると、いてもたってもいられなかった。

朝食を食べて自室へ戻ろうとすると、彼の部屋から奇声と呪文を唱える図太い声が聞こえた。ドアを覗くと、ベットの上に崩れ落ち頭を抑え涙を零す彼と、目をつむり何かを唱える2人のエルト。彼らは必死なのだ。悪夢にうなされ目覚めることもできない彼と、それをつきっきりで目覚めるまで見知らぬ人を見続けなければいけないセフターたち。

「助けてくれ!!痛い!もうやめてくれ!!来るな!!!」

もうやめてくれ。

その言葉を最後に彼は倒れるようにベットに倒れた。

ドアは閉めずにそのままで、私は自室に入る。

自室に入り、備え付けられていた机の上を見てみる。

真っ先に部屋の奥から人が頻繁に触ったあとのようなものがついていない。真新しい本を開いた。


大幅に変更しましたが、物語の進行云々に変化はないので問題ないです。

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