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ちゅ。



 見つめていたら、見つめていた対象が近づいてきた。

 ちゅ。

 軽く。柔らかさにはね返されるみたいに。

 ちゅ。

 もういちど。

 ふれたと思ったら弾けて消えたさっきのより一秒長く。

 ちゅ。

 くちびるでくちびるを食むようにして。


 あまいものを食べたわけでもないのに。

 あまいものとは正反対の煙の匂いと味なのに、こんなにも。

 あまくて、あまくて。


 キスが好きになったのは彼とするようになってから。


 おはよう、のかわりに。

 ごめんなさい、のかわりに。

 すき、のかわりに。


 彼の口べたをさびしく思うときもあるけど。

 彼が自分の口べたをごまかそうとしてるって思うときもあるけど。

 だから。


 ちゅ。

 襟をひっぱって、かかとを上げて。

 ちょっとズレてくちびるのはしっこになっちゃった。

 くやしいから鼻をあま噛みのオマケ。

 口をへのじ。まゆ毛ははちのじの彼を見て、まんぞくまんぞく。

 まわりを気にしながら恥ずかしがる彼の姿で不満も解消。と思ったら。

 ちゅ。

 耳たぶに。

 くすぐったい、くすぐったい。

 そっぽむく彼も耳をおさえるわたしもまっかっか。

 うん。いまのはきっと。

 やったな、しかえしだ。

 ですね。


 まけるもんか。



 ちゅ。ちゅ。ちゅ。

 




 

 

 

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