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胸に まぶたに
とくべつなことじゃない。
二日酔いの朝。
まちがえて買ったカフェラテをもてあます昼。
職場からの帰り道。
洗濯機のまえで寝おちする寸前。
結局ダラダラしてむかえる休日の夕方。
カーテンからもれる西日に目をほそめて、おもう。
ひさしぶりにハマったアニメで号泣する夜中。
寝ちがえた首に満員電車。
ブラックをおしたのに出てきたカフェラテ。
残業からの、みごとな月夜。
見あげれば、おもう。
きみを。
おもう。
電話のあいまにカフェラテをすする音。
ヨレヨレのトレーナーをなかなかてばなそうとしない。
パクチーがスキなんだって。
自転車の運転ちょっと荒い。
よくわからない唄をよく口ずさんでる。
おもい出しわらい、からの。
送られてくるどこかボケた写真。
ぬれた落ち葉。
黒猫のうしろ姿。
みごとにコゲたシャケらしきもの。
子どもたちとガチで競う変顔。
横断歩道の手前にならぶふたつのつまさき。
たまらなくなって、つい。
きみに。
会いたい。
会いたいとおもう。
かおもみたくない。
言い捨てた三秒あとも。
なんでじぶんばかり。
落としたアイスクリームに涙がまじるよりはやく。
調子のわるいときは、きみで帳じりをあわそうとする。
絶好調だと、やっぱりきみのおかげだねって。
目がさめて最初にかわすことばはきみとがいい。
ねむりにつく最後までかんじる温もりはきみがいい。
とくべつじゃない。
けど。
とくべつなこと。
二日酔いの朝。
うまく開けられなかったヨーグルトの惨事。
ひねり出すハミガキ粉。
横断歩道の手前にならぶふたつのつまさき
もてあましたカフェラテでエネルギーチャージ。
それはとても甘くて、やけに苦い。
了
