哀
ねぇ、すきだよ。
そういうときみはきまって。
困ったように笑って。
泣きそうに唇をふるわせる。
ねぇ。
夜空の星ぜんぶをきみのあしもとにあつめたら。
きみは僕に笑いかけてくれるかな。
遠い遠い山の。高い高い頂上にすむという黒龍の紅い目と爪を。
きみの指と首にかざったら。
きみは僕を見つめてくれるかな。
星たちはきみをしっていたよ。
ちいさなきみがなみだをこらえるためによく夜空を見ていたと。
おしえてくれたよ。
僕もとなりにいたかった。
キラキラひかる星といっしょに。
そのなみだがかわくまで。
最後の仲間を亡くした黒龍はかなしんでいたよ。
とてもとてもさびしいと。
泣きすぎてなみだが紅い結晶になって。
泣きすぎて紅い爪がはがれてしまった。
なにもいえなくて。
なにもいえなくてごめんといったら。
黒龍は僕のほほをなめたんだ。
そのとき僕は僕が泣いていることにきづいたんだ。
手のひらにふってきた黒龍の紅い目と爪に。
僕のなみだがまざって。
まぶしくはじけて。
はじけたひかりの粒は。
空に白龍のすがたを描いた。
黒龍も僕も。
見いって。見いって。
白龍がながれ星になってすうっときえていくまで。
ずっと見ていたよ。
そしたらさ。
きみにあいたくて。
きみにあいたくて。
きみにあったら。
つたえたい。
僕がきみをどうおもっているか。
きみが僕にとってどれほどたいせつか。
なんども口にして。
きみを。
あきれさせたい。
怒らせたい。
困らせたい。
笑わせたいんだ。
こんなふうに。
ねぇ。
ねぇ、すきだよ。
了