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いとし
はじめてあなたと言葉をかわしたあの日。
花びらがあなたの肩へ舞いおりた。
その甘いような匂いに。
ほほえんだあなたに。
酔ってわたしは。
あなたに恋をした。
はじめてあなたとゆびさきをからめたあの日。
波に足をさらわれながらたくさん話した。
風のいたずらで。
ふたりの髪がまじりあって。
目をとじてわたしは。
つよくにぎりかえした。
はじめてあなたにふれたあの夜。
カーテンのすき間から月がみえた。
淡いあかりをたよりに。
奥へ、もっと奥へと。
熱にうかされてわたしは。
あなたにおぼれた。
はじめてあなたの涙をみたあの日。
みぞれまじりの雪があなたを濡らした。
のばしたわたしの手をあなたは自分へひきよせ。
くちびるからもれる息でほほをあたためあった。
涙もかわいたころ。
雪は砂となって地上を埋めた。
はじめてあなたをみおくったあの朝。
空はどこまでも青く。
花はほころび。
波はまぶしくきらめき。
風はほほをやさしくなでた。
はじめてあなたの声をきいたあの日。
わたしはあなたに恋をした。
了