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ラブソング



 ミケに顔をふまれた。

 キッチンからフレンチトーストの焼ける匂いがする。

 この夏ヘビロテしたスニーカー。彼のとわたしの。洗って干した。

 年賀状は彼が三十四枚。わたしが二十枚。


 

 なんて伝えよう。

 あなたに。あなたへ。

 両手いっぱいのこの気持ちを。



 ミケのしっぽが鼻先をくすぐる。

 キッチンからあわてた声がする。

 ベランダにならぶ二足のおそろい。

 なつかしい顔がうかんですすまない宛名書き。



 なんて伝えよう。

 あなたに。あなたへ。

 両手いっぱいのこの気持ちを。



 ミケに顔をふまれた。

 ハチミツ多めのちょっぴり焦げたフレンチトースト。

 もふもふパーカー。この冬もキミに活躍してもらうよ。

 濃い緑のセーター。はじめて会ったあの日、あなたが着てた。

 ネコじゃないよ。イノシシだってば。



 むかし言われた。

 しあわせは、あとからしみじみ思うものだって。

 ならこれは奇跡と呼んでもいいのかな。

 いま、こんなにも胸があったかいそのわけを。わたしは知ってる。ちゃんと感じてる。

 それが、うれしい。



 ミケのひたいをあなたはなでる。

 苦笑いしながらほおばって。

 落ち着いたやさしい声音。聞いているだけで泣きたくなる。

 書きものしてる横顔が、すき。


 笑うあなた。


 伝えたい。


 あなたには知っていてほしい。

 両手に抱えきれないこのこころを。


 そして、願わくは。



 あなたのしあわせのそばにわたしもいられますように。





 

 

 

 



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