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雪綴り



 お元気ですか。


 この冬、最後の雪を手のひらにうけたとき。

 あなたのことを思いました。

 あっというまにとけてしまうのがさびしくて。

 あなたのことを思いました。

 

 笑うあなたがよかったけれど。

 喧嘩した日のあなたしかうかびません。

 こわくて。すこしかなしそうな。

 夢のなかでもあなたはいじわるです。


 こちらはよく雪がふりました。

 あなたのいる街はどうですか。

 

 マフラーや手ぶくろはなくすからしないとあなたは言っていたから、風邪をひかないかと心配です。


 ほんのちょっとだけ。

 たまには風邪くらいひいて寝込めばいいと思わなくもないです。


 わたしがいたらと。

 ほんのちょっとだけ。

 後悔すればいいって。


 眠りにおちるまえの一瞬。

 なんでここにおまえがいないんだって、駄々をこねればいい。なんて。


 ちょっと買い物いってくるくらいの気安さで、わたしがいくら手をのばしても届かないような遠くへあなたは行ってばかり。

 

 まだ見てないものがある。


 あなたはいつもそう言いながら。

 そのたびにわたしは。

 

 

 雪がふる。

 手をつなぐ。

 さむいほどあなたはやさしくなる。

 

 だから冬がすき。

 だから冬はきらい。

 どうしてここにあなたはいないの。


 冬と春。

 行きつ戻りつ、くりかえし。

 まるでさだまらないこころ模様。

 

 

 やっぱり風邪はダメ。

 マフラーも手ぶくろもちゃんとして。

 怒った顔だっていいから。

 いつだって、わがままでいじわるで元気なあなたのままでいてください。

 

 風のようなあなたのままで。


 そうしていつか。

 あなたの見た景色たちのはなしを聞かせてほしい。

 


 この冬、最後の雪を。


 手のひらにうけ。

 

 わたしはここで。

 

 ふりおちた雪が花を芽吹かせて空へ帰っていく永遠。

 


 あなたを思っています。






 

 

 

 

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