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棺
“どこへいこう”
ぽつり、あなたはつぶやく。
“どこへでも”
わたしも、ぽつり。
つなぐ手が強くなったのは、どちらから?
“寒い”
あなたの吐いた息、白くなって空へのぼった。
“寒いね”
わたしの息もあなたのあとを追うように。
あの月まで。ねぇ、届くかな。
“あの遠くへ見える海のむこうへ、いっしょにいこう”
あなたは笑う。
“海のむこうへ”
わたしも笑う。
笑ってないと泣いてしまうから。
“熱い”
あなたの頬と。
“熱いね”
わたしの頬とを、あわせて。
つなぐ手と手。ふれる頬と頬。
月光の露にぬれた草木にからだを横たえ。
“どこへいこう”
ぽつり、わたしがいう。
“どこへいっても。そばにいる”
ぽつり、あなたのことばで、頬をしずくがつたう。
どこまでも。
いつまでも。
あなたとわたし、この息がとまるときまで。
了