9.
「‥‥大丈夫だよ」
傷つけたり、慰めたり、忙しいことだとタルデは自嘲した。慰めたり、やっぱり傷をえぐったり。
「私だってそんなことは望んじゃいない。
それに、私はもう死んでいるんだから。死体を焼くのはおかしなことじゃない」
「やめてったら!!」
今度こそ、マーニャのその目が確かに睨んだ。
タルデは吐息を吐くように苦しげに笑った。
「‥‥ごめん。でも、覚悟は必要だと、思うんだ‥‥」
「そんな覚悟なんか――」
マーニャが首を強く振って、涙が散った。あぁ、きれいだとタルデは思った。
「そんな覚悟なんか、したくない。
わたしは確かに怖いと言った。でも、それでもそんなことはしたくないよ。わたしはそんなことを言ってほしいんじゃないの」
すがるように見られて、実際すがりつかれていて、タルデはようやく気づいた。
マーニャは否定してほしかったのだ。
「‥‥そうだね。ごめんね‥‥
分かった。私は誓うよ。私はマーニャの傍で、私でないものになんかならない」
その言葉に、マーニャはほっとしたようで、それから顔をゆがめてまた泣いた。
「‥‥ごめんなさい。辛いのは、わたしじゃなくてタルデなのにね‥‥」
「‥‥いや。私こそ、マーニャを泣かせてしまった。お姉ちゃんなのに、ね‥‥」
空では星が瞬いていた。マーニャはタルデの代わりに泣いてくれるのだと、思った。それでいい。タルデは化け物になったのかもしれないけれど、泣きたい気持ちは持っているし、代わりに泣いてくれる愛しい友人がいるのだから。泣けなくたって、眠れなくたってお腹がすかなくたって、泣きたい気持ちを持っている限りはきっと、タルデはタルデのままでいられるのだろうと、そう思った。穏やかな気持ちだった。