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死者の午後  作者:
死者の午後
9/53

9.

「‥‥大丈夫だよ」


 傷つけたり、慰めたり、忙しいことだとタルデは自嘲した。慰めたり、やっぱり傷をえぐったり。


「私だってそんなことは望んじゃいない。

 それに、私はもう死んでいるんだから。死体を焼くのはおかしなことじゃない」


「やめてったら!!」


 今度こそ、マーニャのその目が確かに睨んだ。


 タルデは吐息を吐くように苦しげに笑った。


「‥‥ごめん。でも、覚悟は必要だと、思うんだ‥‥」


「そんな覚悟なんか――」


 マーニャが首を強く振って、涙が散った。あぁ、きれいだとタルデは思った。


「そんな覚悟なんか、したくない。

 わたしは確かに怖いと言った。でも、それでもそんなことはしたくないよ。わたしはそんなことを言ってほしいんじゃないの」


 すがるように見られて、実際すがりつかれていて、タルデはようやく気づいた。


 マーニャは否定してほしかったのだ。


「‥‥そうだね。ごめんね‥‥

 分かった。私は誓うよ。私はマーニャの傍で、私でないものになんかならない」


 その言葉に、マーニャはほっとしたようで、それから顔をゆがめてまた泣いた。


「‥‥ごめんなさい。辛いのは、わたしじゃなくてタルデなのにね‥‥」


「‥‥いや。私こそ、マーニャを泣かせてしまった。お姉ちゃんなのに、ね‥‥」


 空では星が瞬いていた。マーニャはタルデの代わりに泣いてくれるのだと、思った。それでいい。タルデは化け物になったのかもしれないけれど、泣きたい気持ちは持っているし、代わりに泣いてくれる愛しい友人がいるのだから。泣けなくたって、眠れなくたってお腹がすかなくたって、泣きたい気持ちを持っている限りはきっと、タルデはタルデのままでいられるのだろうと、そう思った。穏やかな気持ちだった。

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