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死者の午後  作者:
死者の午後
7/53

7.

「‥‥タルデ」


 ふと、眠っているとばかり思っていたマーニャが呟いた。


「‥‥起きてる?」


「‥‥眠らないよ」


 同じように呟き返すと、マーニャは少し黙った。


 マーニャも不安なのだろうとタルデは思っていた。つい最近まで共に生き、同じところを目指していたはずの人間が、いきなり自分とは違うものになったというのだから。今夜に限らずとも、ふとした時にマーニャがタルデの名を呼ぶことは増えた。それで何が分かるわけでなくても、呼ばずにはいられないこともあるのだろう。


「‥‥タルデは‥‥」


 黙ったので寝ぼけていただけかと思っていたら、またマーニャが続けたのでタルデは少し意外に思った。


「‥‥タルデは、自分が変わったと思う?」


「‥‥そりゃぁ‥‥」


 いまさら何を、と思って寝ているマーニャを振り返ったタルデは、ぎくりと動きを止めた。


 マーニャが毛布の間から、とても強い目で自分を睨んでいたから。


「違うの」


「何が違う?」


「タルデは死んでしまった。それは、もうわたしにだって分かってる。

 でも、そうじゃなくて、タルデは自分がタルデ以外のものになったと思うの?」


 睨んでいるわけではなかった。ただ、マーニャは運命とか未来とか、そういったものを憎んでいるだけだった。それが分かって、それでもタルデは少し悲しかった。


「‥‥なかなか深いことを言うね」


 タルデは唇を歪めた。


 マーニャはそんなタルデを凝視している。


「私は、私のままだよ。それは確かだ‥‥と思う。傍から見てどうだかは分からないけど。

 それでいて、死んだ自覚もそのまま動いている自覚もある。死んだら土に還ると思っていたのに、こんな存在ありえないと思うのに、それでも私は死んでも私のままだと、そう言えるよ」


「‥‥わたしもそう思うよ」


 なぜ、マーニャがこんなことを言い始めたのか分からなかった。またあの強い目に捕まりたくなくて、タルデは目を逸らして焚き火をつついた。

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