エピローグ
夜だった。2人の前では炎が踊っていた。
「‥‥結局、屍人の女王は何をしたかったわけ?」
あっさりと決着はつき、少々欲求不満気にヨギは尋ねた。ここはあの集落の外れで、すでに敵は残っていない。
隣のタルデは肩をすくめた。
「要するに、どいつもこいつも滅ぼしてほしかったんだろう。馬鹿馬鹿しい」
聞けば、死者の女王はもとは重病人である。人生を儚みこそすれ、永い永い時間など望むべくもなかった存在だ。動けるようになって最初は嬉しかったのだろうが、どうやっても自分が滅びないことを知れば覚えるのは厭世観だ。人間の一生の時間を超えてしまえば一層に。
あの馬鹿はありえないほどの絶望を振りまいてしまったんだ、と心底忌々しそうにタルデは吐き捨てたが、それにヨギは重ねて尋ねた。
「‥‥タルデさんも、そう?」
すると虚を突かれたようにタルデはまじまじとヨギを見た。
「‥‥いや、私はそうでもない」
「なんで?」
どうやっても自分が滅びないことを知っているのに。
「放っておいても一千年もすれば終わる。‥‥はずだったのか、なんでか妙に長引いているけど、それでも必ず終わるんだから」
「千年って‥‥」
「カミサマが教えてくれたんだ、最期に。
私の場合は、多分、剣を体内に収めたりなんかしているからか、すでにそれ以上動いているけど。終わりは必ず訪れる。だから、それを待つさ」
カミサマ?と訊けば、かつて世話になった男性の屍人がそう呼ばれていたんだと答えた。
「私は死に急げない。マーニャに申し訳が立たない」
「‥‥マーニャ?」
その笑顔はタルデには似合わないな、と思った。思ったが、それ以上に美しいものを知らなかった。
「私の親友で、妹で、大切だったひとだよ。もう顔も声も思い出せないけど」
色々なことを私は忘れたよ、とタルデは言った。あっさりとしていて、だから余計に物悲しかった。
「まぁ、まだ後始末は残っていることだし。動けるだけは動き続ける所存です」
そうやって透明な笑みを向けるから、
「それならあたしもつきあうよ」
と言ってしまったのだった。
消化不良なのはヨギだけじゃないさ。私もさ。
と思いながらもとりあえずこれで締めさせていただく。




