12.
ここも正しく屍人の集落だった。
少なくとも目につく範囲に生きている人間は、ヨギ1人だ。別段それが心細いとかではないが、ただ、本拠にしては人数が少ないような気がするな、とぼんやり思った。
ぼんやりでもしないと、うっかり襲い掛かりそうになる。
「思ったより少ないのだな」
同じことを思ったようで、呟いたタルデに案内人はにこやかに振り返った。
「精鋭ですよ」
ヨギのことは無視することにしたらしい。案内人がそういう態度だからか、もともと他人に興味はないのか、少ない視線が集まることもなく、ヨギは存分に集落を観察した。耳は会話を拾っている。
「というよりも、どうせ、標の数制限だろう」
「それは‥‥ないとは言えませんが」
「まぁ、それほど器用なことはできないしな。大した刺繍だとは思うが」
多分普通に考えて、百年やそこらは存在していたはずだが、百年を費やして大した数を作られないとはどうなんだ、と思ったが、そういえばタルデも、筋力の制御が甘くなるとか言っていた気もするし、それが当然‥‥なのか?
そしてタルデが気付いた標とは刺繍らしい。
「我らが女王にそればかりさせるわけにもいきませんし」
正直それは恥部だと思うのだが、案内人に言いよどむ色はなかった。むしろそれで納得するなら安いものだ、とでもいうような奇妙な切実さを覚える。
「‥‥別に統治する必然もないだろうにな」
今度の呟きは案内人には届かなかったらしい。
集落の様子をぼんやりと眺めながら歩いていたヨギは、遠巻きに見える屍人が揃いも揃って若い男性の姿だというのに気付いた。気付いてしまった。
「‥‥女王って、‥‥」
先ほどのタルデのそれと同程度に小さな呟きは誰に拾われるでもなく、風に消えた。
太陽は沈もうとしている。




