11.
「‥‥お前が少し羨ましい」
ぽつりとタルデは言った。けれどもその意味を問いただす前に、視界がだんだんと開けてきたことに気付いた。
「あ。そろそろ次の村?」
「そのようだ」
わりと近いな、と思い、であればここも屍人の村かな、と思った。一日で行き来できるのであれば、交流は多いかもしれず、そうなれば感染も早いだろう。ヨギとタルデの予想では、先に感染したのはこちらのはずだ。道なき道を辿ってこられたのなら分からないが。
「ここに女王はいるのかしらね?」
「どうだろうな」
別に屍人は屍人同士感じあうようなことはないらしい。少なくとも剣によって屍人になったというタルデと、感染によって屍人になった者達との間には何もないとタルデは言った。
ただ、それでも、
「剣によらなくても増えるようになっても、やはり剣は根幹らしくて。あちらに私は分かるそうだよ」
道すがら言ったタルデの言葉に過ちはないようで、どこか嬉しそうに寄ってきた第一村人は屍人だった。まだ集落は見えない。斥候か何かだろうか、どうしたものか。
ふむ、と隣でタルデが思いついたように言った。
「‥‥案内を頼もうか」
屍人には屍人が見れば分かるらしい。その伝でいけばヨギが生きる人間だということは見られたら分かってしまうというわけで、だからその屍人は怪訝そうにこちらを窺ったが、タルデがまるで無視するものだから気にするのをやめたらしかった。
「案内ですか?剣の主様」
なんだそれは、と言いかけたようなしょっぱい顔を一瞬で無表情に隠して、タルデは鷹揚に頷いた。
「あぁ。‥‥女王がいるのだろう?」
先に立つ屍人をうっかり攻撃しないように気を付けながら、ヨギはタルデにこっそり尋ねた。
「ここがそうだって、知ってたの?」
「や、あの格好を見て思い出した。随分前に、あれらの女王が私を招きたいとたわけた伝言を寄越したことがあって。それに謳われていた標があったからな」
あの頃は女王というのがあの乙女だと知らなかったし、こんな風に屍人が増えるとも思っていなかったから放っておいたんだ、とタルデは言った。伝言を持ってきた屍人は丁重に斬って捨てたとも。




