10.
「あたしは屍人に育てられたの」
集落は点在している。このまま道を行けば次のどこだかの集落には辿り着けるだろう。それが目指す場所かどうかは分からないが。
だから、足を止めずにヨギは語った。
「死体にか。それで死体にもならずに‥‥?」
「うんそう。育ての両親が、産みの親かどうかは知らないけど。
屍人に成長はないでしょう、だから、触れずに育ててたらしいよ」
成長した暁には仲間に迎え入れようとでも思っていたのだろうか。今となっては分からない。唯一理由を知っていた両親を、師が滅ぼしたために。
「さっきの村みたいなところでね。住民は全部屍人だったみたい。そこにリオが現れて、村ひとつ滅ぼして、あたしを連れ出した」
目を見開いて両親の最期を見届けたヨギに、お前は強いなと師は言った。ただ閉じられなかっただけなのに。
「それからリオと一緒に旅をして。リオの武器は銃弾だったから、あたしなんかよりも問答無用で。リオは屍人を憎んでいたから、憎しみだけで狩っていたけど」
他人も己も等しくどうでもよいというような師のなかで、その憎しみだけが温度を持っていた。だから歪んでいると思っても何も言えず、師の歪みは加速した。そういうことなのだろう、と今なら思う。
「‥‥私が出会ったのがお前でよかった‥‥のかな」
「少なくとも、視界に入った時点で仕留めていたから、リオなら」
こうして言葉を交わすことはありえなかっただろう。その善悪は別にして。
「そして、ある日、リオが言ったの。
私はお前の敵だと」
「‥‥感染していたのか?」
「分からない。分からないけど、嘘だと思ってリオを見たらリオは屍人で。だからあたしはリオを滅ぼすしかなくて」
訓練は旅をしながらずっとしていたのだけれど、戦う意図で他人に立ち向かったのはあれが初めてだった。4年前のことだ。
「屍人は滅ぼしたら何も残らないじゃない」
師の遺体も残らなかった。嘘だと思っていたのに、嘘だと思っていたかったのに、それで本当だったのだと分かってしまった。
「でも、あたしがリオのやっていたことを継いだら、リオが遺るじゃない」
そうか、それが、ヨギが屍人を狩る理由か。目の前が晴れた気分で隣を歩くタルデを見た。
「だから、あたしはリオの呪いのせいにして、屍人を狩るの。狩り尽くすの」
こんなにも空は晴れていて、ヨギの目の前も晴れていて、けれどタルデの表情は曇っていた。歪んだ師には歪んだ弟子か、とヨギは思った。




