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死者の午後  作者:
屍人狩りのヨギ
49/53

10.

「あたしは屍人に育てられたの」


 集落は点在している。このまま道を行けば次のどこだかの集落には辿り着けるだろう。それが目指す場所かどうかは分からないが。


 だから、足を止めずにヨギは語った。


「死体にか。それで死体にもならずに‥‥?」


「うんそう。育ての両親が、産みの親かどうかは知らないけど。

 屍人に成長はないでしょう、だから、触れずに育ててたらしいよ」


 成長した暁には仲間に迎え入れようとでも思っていたのだろうか。今となっては分からない。唯一理由を知っていた両親を、師が滅ぼしたために。


「さっきの村みたいなところでね。住民は全部屍人だったみたい。そこにリオが現れて、村ひとつ滅ぼして、あたしを連れ出した」


 目を見開いて両親の最期を見届けたヨギに、お前は強いなと師は言った。ただ閉じられなかっただけなのに。


「それからリオと一緒に旅をして。リオの武器は銃弾だったから、あたしなんかよりも問答無用で。リオは屍人を憎んでいたから、憎しみだけで狩っていたけど」


 他人も己も等しくどうでもよいというような師のなかで、その憎しみだけが温度を持っていた。だから歪んでいると思っても何も言えず、師の歪みは加速した。そういうことなのだろう、と今なら思う。


「‥‥私が出会ったのがお前でよかった‥‥のかな」


「少なくとも、視界に入った時点で仕留めていたから、リオなら」


 こうして言葉を交わすことはありえなかっただろう。その善悪は別にして。


「そして、ある日、リオが言ったの。

 私はお前の敵だと」


「‥‥感染していたのか?」


「分からない。分からないけど、嘘だと思ってリオを見たらリオは屍人で。だからあたしはリオを滅ぼすしかなくて」


 訓練は旅をしながらずっとしていたのだけれど、戦う意図で他人に立ち向かったのはあれが初めてだった。4年前のことだ。


「屍人は滅ぼしたら何も残らないじゃない」


 師の遺体も残らなかった。嘘だと思っていたのに、嘘だと思っていたかったのに、それで本当だったのだと分かってしまった。


「でも、あたしがリオのやっていたことを継いだら、リオが遺るじゃない」


 そうか、それが、ヨギが屍人を狩る理由か。目の前が晴れた気分で隣を歩くタルデを見た。


「だから、あたしはリオの呪いのせいにして、屍人を狩るの。狩り尽くすの」


 こんなにも空は晴れていて、ヨギの目の前も晴れていて、けれどタルデの表情は曇っていた。歪んだ師には歪んだ弟子か、とヨギは思った。

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