9.
最後に、一晩を明かした家に火を着けて、タルデとヨギとはその集落を後にした。目指すのは東、あるいはもう少し南より。朝日に向かって歩くのは少し眩しいが、集落を抜けてしまえば樹も生い茂り、そのころには太陽も頭上からこぼれてくるのみになったため気にならなくなった。
「ヨギは」
無言でヨギの足音だけが響いていたが――タルデのそれは奇妙なほどに響かなかった――不意にタルデが声をかけた。
「?」
「何故、死体を狩る?」
屍人、とヨギや師は呼ぶが、確かにそれは誰にも知られた呼称ではなかった。
「下手を打てばあれらと同じになるだろうに」
正面から訊かれたのは初めてだった。
師はどう答えていただろうか、と思い、それはきっとタルデの求める答えではないのだろうな、とそれを打ち消した。ヨギは何故屍人を狩るのか。師の呪いだから、それは言い訳だ。ではそれを言い訳にして、何故ヨギは屍人を狩っているのか。
ようやくひねり出した答えは我ながら曖昧なものだった。
「‥‥必要と思うから?」
よく晴れた午後だった。であるのに、二人の会話はどこか仄暗かった。
己のような存在は、必要だと思う。それは確かなことだ。
屍人は感染する。あれらは人間にしか感染しないが、滅ぼす誰かがいなければ、きっと生きた人間はそのうちに絶えて全てが屍人になってしまう。だから止める誰かは必要だし、ヨギにはそうなる機会が与えられたから、屍人狩りになった。
「死体は死体に還れ、か。それは確かにそうだろうが」
実際には死体には還らないが。そうなるには時間が経ちすぎているのか、それとも感染した病魔のせいなのか、狩られた屍人は死体にならずに風に解けていなくなる。
何も残らない。
「‥‥あたしが、リオを忘れたくないからかもしれない」
「リオ?」
静かな声に、救われる気分だった。ヨギは頷いた。
「リオは、あたしの育ての親の仇で、師で、あたしが最初に殺した相手だよ」
タルデさん、少し似ている。そういうと、タルデは困ったようにヨギを見た。




