5.
「まぁ、あなたのことはこの際いいわ」
あとで教えてね、とまるで世間話のように言い置いて、ヨギはその足元にしゃがみこんで声をかけた。微妙に困ったように少女が見下ろしてきているのは知っていたが、それよりも重要なことがある。
「ね。あなたたちの女王は、どこにいるのかしら?」
これで3回目だ、とヨギは思った。
この集落に着いてから、これで3回同じ問いを口にした。1度目と2度目の答えはヨギに対する攻撃だった。3回目の今回はどうだろう?どこか楽しむ気持ちで返事を待つ。この、攻撃を仕掛けるにも動けない哀れな獲物はどのような答えを返すのだろう?
けれど答えは頭上から降ってきた。
「なんだ、お前もあの乙女を捜しているのか」
乙女って。
一瞬視線を上げたヨギに向かって、足元の屍人が手を伸ばしてきたが、ヨギはそれを踏みつけて視線を戻した。
「あたしにあなたたちの死の呪いは、効かないわ」
痛覚はおそらくないのだろうけれど、踏みにじる。きっと屍人の感情は人とさして変わらず、であれば屈辱は感じるはずなのだ。
「だってあたしには師の呪いがあるもの。
ねぇ、教えてくれないの?あなたたちの女王は、どこ?ここにいるの、それともどこか遠くに?」
ぐりぐりと踏みつける。けれど屍人は口を開かなかった。女王への忠誠心だとでも言うのだろうか?それでもヨギは別に失望しなかった。これまでもそうだったからだ、屍人は誰も脅しや痛みに屈してくれない。
それなら滅ぼすしかないな、と拳を握り込んだヨギだったが、頭上で少女が口を開いた。
「それほど遠くではないだろう。このあたりには死体が多すぎる」
でもここではなさそうだな、と独り言のように言うのに、ヨギは頷いていた。
「あたしは西から来たの」
「私は北から下ってきた‥‥と思う」
何故かあやふやだ。だが言葉と違い、剣筋に迷いはない。背中から縫い付けていたそれを抜いて、異物が消えたのに反応する前にその首を落としていた。まるで作業のように。野菜か何かを斬るように。
「なら、東?」
「だろうな」
そうして無造作に剣を収めて見せたから、それならとヨギも手を下ろして立ち上がった。




