4.
これは戦いではなく、狩りだった。
本来であれば狩られる側であるはずのヨギが、しかし一方的に狩る側にまわる、それは狩りだった。なぜならヨギは屍人狩りを師から受け継いだから。
だから、別の誰かが割り込んでくることなんて考えもしなかった。
「‥‥驚いたな」
静かな声が聞こえて、ぽぽんと軽く、一歩退いていたはずの一番偉い屍人の護りの首が飛んだ。
「な‥‥」
「え?リオ??」
それは懐かしい師の口調と似ていたから、ついでのようにまた一人を撲滅したヨギは振り返った。ありえない奇跡に期待したわけではなく、ただ、ほとんど反射的に。
そして、やはり、奇跡はなかった。
2人の屍人を軽く切り飛ばしたのは、時代遅れなことに抜身の剣を振う、1人の少女だった。時代遅れだと言ったところで、屍人の武器はその呪いを感染させる己の肉体だけだし、ヨギの武器だって拳ひとつだから、ことこの場に於いてだけを言えば、時代の先を行っているのは少女のほうだったが。
ヨギが狩った屍人と同じように、どうやら少女の斬った屍人も風に解けて消えるようだったので、視界は随分とすっきりしている。最初に囲まれた以上の人数を確かに殴った覚えがあるので、では、この集落をもしかしたら滅ぼしてしまっただろうか、ヨギは少女が剣をまた振り上げるのを見てとって、慌てて声を上げた。
「あ!あ!あ!ちょっと待って!」
少女は待たなかった。だが、ヨギが慌てたようには、剣を突き刺された屍人は滅びなかった。彼女の剣は、逃げようとしたその脚を斬り飛ばし、転んだ背中に突き刺さり地面に縫いとめていた。
「‥‥まだ滅んではいないよ」
ヨギと見た目の年齢はそう変わらない少女が言った。そして困ったようにヨギを見る。つい懐かしいひとを思い出しそうになるが、目線が違った。師は、見上げるほどの長身だった。あまり近くで会話をするには首が痛くなるくらいには。
「‥‥あなたも、屍人よね?」
駆け寄って、ついうっかり反射的に拳を繰り出しかけて、それを強いて止めてヨギは尋ねた。
「‥‥屍人、というのが動く死体のことなら、そうだな」
「ならなぜ、仲間を斬るのかしら?」
素直に尋ねると、一度瞬きをした。その、自然ではなくわざとしているような動作が、どうしたか可愛らしい。その手は相変わらず剣を握り、腕だけで逃げようとする屍人を縫いとめているのだが。
「別に仲間とか思ったことはないのだけど」
「そうなの?」
足元の1人以外には見渡す限り動く者のない集落で、2人の会話はどこか呑気だった。




