3.
「そう、話を聞かせてもらいたいの」
にこにこと笑いながら、気配などまるでない屍人たちの気配を数える。目の前に、まず1人。これが言葉を返してきた個体だから恐らくこの中では一番偉い。それはつまり、一番女王に近いということだ。その少し後ろに控える感じで2人。恐らくはこの個体の護り。それからヨギの横から背後に、4人。計7人が集まっていた。
さらに一挙足では近付けないところに何人かの存在を確認したが、それはひとまず無視をする。
屍人は基本的に、ただの人を無駄に殺したりはしない。
いつからその存在があるのかはヨギの知ったことではないが、彼らは、接触によって感染する。それ以外の方法では増えない。だから、隣人として近付いて他人が気付かないうちに仲間に引き込むというのが典型的なやり口で、それ以外の方法で他人に害をなすことは滅多になかった。無駄にひとを殺すよりは、ひとりでも多く仲間に引き込むことを考える、それが屍人だ。それはただの本能だと師は言っていたが、こうして会話をする頭があるということは、それは理性的な考えに基づくのかもしれないな、とヨギは考えている。
拳を武器と定めたときに、師は随分と心配したものだけれど、これまでのところそれほどの危険には、ヨギはさらされていなかった。相手にとって飛び道具は埒外だ。同じ間合いであれば、ヨギに負けはない。
「――あなたたちの、女王サマはどこ?」
その言葉に対する反応は、あまりに分かりやすかった。
横手と背後から手が伸びた。
だが彼らは気付かなかった。ヨギの言葉の最後、疑問符は彼らの頭上から降ってきた。その事実にも、その意味にも。
効き手を伸ばし、無防備になった背中に、ヨギは拳を叩き込んだ。1人、2人。先ほどの立ち位置から見て右後ろの2人をあっという間に下したヨギは、それらの身体が砂と崩れる中、口元の笑みは崩さず、囀る。
「だって屍人をどれだけ狩ってもキリなんてないんだもの」
「‥‥馬鹿な」
屍人は基本的にただの人のままだと、今ではヨギは思っている。
師の下にいたころは、師は問答無用に過ぎたから、屍人はただ動いてしまっただけの死体でそこに意志などないと思っていた。意志があったとしても獣程度の薄弱なものだと、師は信じていたようだったしヨギもそう思っていた。
けれどその実、彼らは生きていたころのまま、少し鈍ってはいても感情はある。
だからヨギは微笑むのだ。
「あたしは、ヨギ。屍人狩りのヨギ。あなたたちも、女王も、あたしが狩るよ」
獲物に不可解な恐怖を味わわせるために、ヨギは微笑みながら舞うように、戦うことを選んだ。




