2.
ヨギの武器は己の拳だった。
師の武器は一丁の銃だった。師はそれで、見かけるたびに問答無用で屍人を狩っていた。あれはこれ以上ないほど狩りだったとヨギは思う。言葉を交わすこともせず、見つけた次の瞬間には銃口が火を吹いて、相手は死体も残さず消える。あまりにあっけないものだった。それにくらべてヨギのそれは如何にも効率が悪いと我ながら思う。だが、師のような銃も、師の前のひとは鞭だと言っていたか、そういった手に持つ武器も、ヨギに合わなかったのだから仕方がない。
屍人狩りはなにかひとつ武器を持つ。その武器でしか屍人は狩れない。そしてまた、それは致命傷でなければならない。そうでなければ触れられて、彼らと同じものになるだけだ。
「あ。しまった。話を聞く前に狩っちゃった」
しかし手を伸ばされたらそれは条件反射のようなものだ。特にヨギは間合いが狭いから、一切の油断をしないことにしている。だから仕方がない。
それにまだ、話を聞く相手は残っているのだし。と、ヨギは周りを見回した。
三々五々、村人が集まってきている。侵入者の排除の為だろう。
「こんにちは。話を聞きたいのだけれど?」
しかしその侵入者たるヨギのほうは、天真爛漫に笑顔を振りまいて見せる。とはいえその両の拳は握られていて、それはつまり彼女なりの戦闘態勢のままだった。一瞬の油断が文字通り命取りであるのだから、ヨギに油断はない。あるとするならば彼女と相対する屍人たちの側に。
「話、ですか?」
すっかり取り囲まれてしまったヨギはけれど、笑みを崩さない。逆に取り囲んでしまったことで安心したのか慢心したのか、ひとりの屍人が口を開いた。どうやら会話をする気があるようだ。今のところ取り囲む誰からも手は伸びない、そうであればヨギも手を出さない、今のところは。
「えぇ。訊きたいことがあるのだけれど」
弛緩しているように見える屍人の側も、声をかけているのがこの中のリーダー格なのだが、少なくとも彼自身は油断をしているつもりはない。先ほど仲間のひとりが消えてしまったのを見たのだ、この無害そうな小娘が、ただの人には滅ぼすことなどできないはずの屍人を殺せる武器を隠し持っていることは違いがないのだから。
ただ、それが何であっても、こうして取り囲んでいさえすれば、このうち誰かがそれを奪うことはできるはずだった。屍人はただの人よりも身体能力に優れている。小娘一人に隙を突かれるとしても、一人二人くらいだろうとそのくらいに見積もっていた。そしてそれは油断だった。




