13.
タルデが駆け付けたときには、すでにその刃は振られたあとだった。
「‥‥レイ」
見つけ出した彼は死にかけていた。それでもその腕は剣を離さずに抱き込んでいた。
「‥‥姐さん、ごめ、ん‥‥」
タルデはそれに応えず、彼の手から剣を抜き取り、それを振った。無造作な割にそれは正確にレイの心臓を貫いた。タルデは己の為したこと見極めるかのように瞬きもせずじっと礼を見下ろした。
「‥‥すでに負った傷がどうなるのかは知らないが」
どうにもならなくても普通に死ぬだけだ。運が、よければなのか悪ければなのか、どうにかなるならばタルデと同じ存在になるだけだ。
結局彼は目を開けた。
「‥‥お前は馬鹿だな」
話を全て聞いて、タルデはそう言った。レイは自嘲するように唇を歪めた。
「その娘にとってみたら、何だか知らないが急に斬りかかられたのだろう。恐慌のまま全力でお前を突き飛ばしたくらいで済んで、よかったな」
お嬢さんはそのままどこかに消えた、らしい。タルデが駆け付けたときには離れは無人で、母屋も静かなものだった。行方不明を気付かれていないのか、それとも何かが起こったのか‥‥タルデに調べる気はなかった。
「ごめん、姐さん」
「謝られてもな」
レイが作った体幹の鋳型は、折れた背骨の代わりに芯が作ってあったのだけれど、タルデは結局剣を体内に収めるままにすることにした。レイの言葉を聞き、目にしなければそんな気を起こさなかったというのなら、目に入らないように保管するべきなのだろうと。
「まぁ‥‥私も悪いのだろうけど。お前は馬鹿だ」
気を失っただけなのか本当に死んでいるのか区別がつかなかったので、タルデはレイをその自宅に連れて帰っていた。かつて依頼をしたあの日のように、テーブルに向かい合って座っている。あの日と同じように、夜だった。
「‥‥依頼を受けてくれたことには感謝する。だが、馬鹿なお前と共にはいられないな」
「もうこんなことはしない。けど‥‥うん、ごめんな、姐さん」
タルデは恋を知らない。そんなものを知る前に死んだ。
だから狂うほどの想いは、マーニャに向けた親愛しか知らないが、もしそれと同じならば、同じように恋に狂えばきっとレイはまた同じことをする。それは今の決意がどうだろうが関係はなく、そういうものだと判断した。
だから、告げる。
「私は行くよ。どこだか知らないが。お前は‥‥」
「俺は、お嬢さんを、捜すよ」
「そう。‥‥どこへなりとも、行くがいいよ」
そして二人の道は分かたれた。




