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死者の午後  作者:
夕姐さんと光の王
38/53

12.

 設計を考えます、と言って、レイはタルデに背を向けて作業台に向かった。背後でタルデが動き出す気配。彼女はその気になればまるで音もなく動くことができるのだが、気を遣ってわざとやかましく動いている、らしい。それはそれで調度を壊すのではないかという不安は産まれるのだが、まぁ、気遣いに文句を言うのも大人げない。


 正直なところ、設計は考えついていた。


 四肢のそれは最終的にはタルデが身に着けた状態で縫製をして、着脱不可能なまでにぴたりと作ったが、仮縫いができないということはその方法はとられない。ならば装着後に締め付けができるようにすればそれで済む。


 タルデが娘の姿をしているということはあまり考慮に入れなかった。


 普通なら、いや、歳頃の娘の身体をじっくり見たことなどないのだが、それが男である自分のものとは違って柔だということくらいは知っている。だが、ことタルデに関して言えば、売られるくらいの貧しい生活ののち・孤児院での生活を経て・旅に出たという彼女の身体には、あきれるくらい肉がついていなかった。いや、別にレイがじっくり見たとかそういうことではなくて、いや見たと言えば見たのだが、寸法を細かく細かく採る必要があったのだから仕方がないだろう。誰に向けての言い訳なのか、脳内で繰り返しながら、レイは図に起こしていく。


 そうしていながら彼が考えたかったのは、


「‥‥裏切り、なんだろうな、これは」


 呟きが漏れて、それが存外響いたことに自分で驚いて、弾かれるように振り返って思わず確認したが、その場にタルデの姿はなかった。


 後ろめたさと、安堵の息を吐く。


 レイは、件の剣について、多くを知っていた。けれど全てを知っていたわけではない。


 多く知っていることは、つまり、タルデがその長い時間の中で得た確信だとか予測を含んだことばかりで、それらが本当に正しいのかどうかはタルデにすら分からない。けれどそのほとんどをタルデはレイに告げていた。彼女は話し相手に飢えていたのだろう。さらに言えば存外講釈好きなようだった。


 そしてそれらの知識は、レイに、歪な希望を植え付けてしまった。


(制御が甘くなるというのなら、筋力の衰えたお嬢さんでも、普通に動くくらいのことはできるようになる)


 そしてまた、


(多くの時間を差し上げることができる)


 そのためにはあの儚い娘を斬らねばならない。タルデからあの剣を借りるためには――

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