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死者の午後  作者:
夕姐さんと光の王
36/53

10.

「‥‥うわ」


 思わず呻いたレイはそれほど悪くないと思う。不可抗力だ、と思いながら目を逸らす。


「‥‥まぁ、見て楽しいものではないだろうな」


 無造作に脚を出してみせたタルデは自嘲するように言った。


 傷だらけの身体だった。


 あざだらけで見るに堪えない、わけではない。そちらのほうが幾分かましだったとさえ思う。


 肌は肌としては存外に綺麗で、だからこそ傷口が目立った。切り傷刺し傷擦り傷。さらに、脚は折れた骨を無理に継いだと言っていたが、はみ出したものがあってそれが視覚に暴力だった。ただ、ぱくりと開いている傷からも擦れているところからも、流血は一切ない。ただ綺麗な断面が見えているだけだった。肌の白さとは違う肉の白さなど目の当たりにしたくはなかった。


 それでどのように活動しているのだと訊いたら、布でぐるぐる巻きにするのだという回答が返ってきた。


「私が私の形を保ってさえいれば、動けてしまうんだ、この私は」


 だからこそ、鋳型を必要とするのだと、言った。


「‥‥そこまでして‥‥」


 壮絶な存在の仕方は聞いた。それでなぜ、今でもまだ人として在ろうとするのか。


「‥‥マーニャが死んだときに、私も存在をやめればよかった。とは今でも思う」


 もうどんな声だったかすら覚えていない、と呟いた彼女はあまりに透明な笑みの形に唇を歪めた。


「でもあのときに投げ出せなかった私は、終わるまでは進み続けるしかないんだ」


「‥‥」


「全力で。持てる全てを以て。できるだけのことをして。

 そうでないと、私はマーニャに謝ることすらできないよ」


 そう静かに宣言した、それにはこちらも全力で応えなければならないと直感したから、レイは黙々と皮を接いだ。



 応えなければと思った、気持ちに嘘はない。


 だから、魔が差したのだとしか、言いようがない。

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