10.
「‥‥うわ」
思わず呻いたレイはそれほど悪くないと思う。不可抗力だ、と思いながら目を逸らす。
「‥‥まぁ、見て楽しいものではないだろうな」
無造作に脚を出してみせたタルデは自嘲するように言った。
傷だらけの身体だった。
あざだらけで見るに堪えない、わけではない。そちらのほうが幾分かましだったとさえ思う。
肌は肌としては存外に綺麗で、だからこそ傷口が目立った。切り傷刺し傷擦り傷。さらに、脚は折れた骨を無理に継いだと言っていたが、はみ出したものがあってそれが視覚に暴力だった。ただ、ぱくりと開いている傷からも擦れているところからも、流血は一切ない。ただ綺麗な断面が見えているだけだった。肌の白さとは違う肉の白さなど目の当たりにしたくはなかった。
それでどのように活動しているのだと訊いたら、布でぐるぐる巻きにするのだという回答が返ってきた。
「私が私の形を保ってさえいれば、動けてしまうんだ、この私は」
だからこそ、鋳型を必要とするのだと、言った。
「‥‥そこまでして‥‥」
壮絶な存在の仕方は聞いた。それでなぜ、今でもまだ人として在ろうとするのか。
「‥‥マーニャが死んだときに、私も存在をやめればよかった。とは今でも思う」
もうどんな声だったかすら覚えていない、と呟いた彼女はあまりに透明な笑みの形に唇を歪めた。
「でもあのときに投げ出せなかった私は、終わるまでは進み続けるしかないんだ」
「‥‥」
「全力で。持てる全てを以て。できるだけのことをして。
そうでないと、私はマーニャに謝ることすらできないよ」
そう静かに宣言した、それにはこちらも全力で応えなければならないと直感したから、レイは黙々と皮を接いだ。
応えなければと思った、気持ちに嘘はない。
だから、魔が差したのだとしか、言いようがない。




