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死者の午後  作者:
生者の夕べ
24/53

11.

 結局おっさんはタルデを止めきれずに、二人は静かに部屋に入り込んだ。


「‥‥こいつは‥‥」


 入る前から予感はあった。というよりも、嗅覚に訴えかけるものはあった。


 だがそれを無視して扉を開いた、その眼前にさらされたものは、赤。獣脂の燃える匂い、その炎に照らされて、ただ、赤。


「‥‥」


 タルデは無言で一歩を踏み出す。その足元で、ぴちゃりと濡れた音がした。


 タルデはかつて、同じような状況を作り上げたことがある。


「‥‥さて」


 おっさんは入ろうとしなかった。ただ、目だけは凝らして逸らさなかった。かつてタルデが作り上げたものと同じような、けれどまるで違うこの状況。


「‥‥お前さんは剣で実験を繰り返していたな」


「えぇ。すぐに飽きが来ましたが」


「その結果を鑑みて、この状況をどう考える?」


 厳しい目で室内を見据えるおっさんからは、一歩前にいるタルデの表情は見えないはずだ。


「――あの剣で滅多斬り」


「‥‥だろうな」


 吐き捨てる声に、感情はまるでこもらなかった。


 タルデは近くにあった肉塊を蹴飛ばす。びちゃりと壁にぶつかったそれは、それでいながらひくりひくりと動いていた。


「――燃やすしかないですね」


「あぁ――‥‥剣は、」


「ここにはありません」


 懸念はある。果たして散らばるそれらを集めたところで、ひとり分になるのだろうか、という。苦痛がないのは辛うじて救いだろう。見回して、転がる生首と目が合って、それが物言いたげに瞬いたが声帯がないから言葉はなかった。


 だからタルデは無言で腰の剣を抜いた。これはただの剣だ、ただごく当たり前の死を与える剣だ。


「‥‥意識がないほうが幾分かましでしょう」


 呟きながら叩きつけた。問いかけに意味はないからしなかった。問答無用で終わりを与えた。タルデにはそれしかできなかった。


 そして無造作に燭台を落とした。


「ひと言言ってからにしてくれや」


 おっさんのぼやきは無視をした。ただ炎に背を向けて、部屋を出た。

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