8.
「祠の裏に突き刺しました」
思い出せてすっきりしたが、すっきりしたのはタルデだけのようだった。
おっさんは頭を抱え、少年は非難する目でタルデを見ていた。非難はおっさんからも発せられている。
「‥‥天使サンよ。
どうやら面倒事は、お前さん発信のようだ」
「つまり?」
「‥‥兄さんは、すごい剣を手に入れたんだ、って‥‥」
おっさんとタルデとの間で交わされている会話に出てくる剣がどういったものかは分かっていないのだろうが、感じるところがあったのだろう、呻くように少年は言った。それでタルデにも事態が呑み込めた。
「つまり、私が飽きて放り出した剣を持って何かをやらかしたのが君の兄だというわけか。
で、何をやらかした?」
他人事のようなタルデの言い方に、一瞬反発しかけたものの少年は堪えてみせた。
「っ‥‥まだ、何も‥‥」
「何も?それなのに息せき切ってやって来たのか?」
おっさんの非難の視線はやはりタルデにのみ注がれているが、その言うことにはタルデも同感だった。まだ何もしていないのなら、少年は何をそれほど危惧してやって来たというのか。
「‥‥兄さんは、弱いひとだから‥‥今はまだ、調子に乗っているだけ、だけど、いつ何をしでかすか分からないんです」
「ふむ?」
「弱いから、取り上げられればいいけど、でもあの執着だと多分なりふり構わないと思うから」
少年もその剣を垣間見たのだと言った。
そして、それが忌むべきものだと直感した。それは振るわれてはならないものだと確信した。それ故に、山に住むという人ではないものに助けを求めに来たのだと。あれは人が振るうべきものではないから。
「貴女があれの持ち主だというのなら、お願いです、兄さんからあれを離して」
「‥‥まぁ、被害が出る前にはどうにかしてぇところだが‥‥」
だが、待てと言いたい。
「‥‥別に私はアレの持ち主だというわけではないんだが‥‥」
それはタルデの心からの主張だったのだが、難しい顔を突き合わせる男どもには完全に無視された。




