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死者の午後  作者:
生者の夕べ
20/53

7.

 適当に着替えを終えて、応接間に使っている部屋に戻ったタルデを出迎えたのは、珍しく怒気を感じさせるおっさんの声だった。


「よう天使サンよ」


「なんですかカミサマ」


 お互いに揶揄するように呼び合う。そこに一片の真実味も感じられないのは、自分たちが決してそのようなものではないと知っているからだ。少年もそれに反応しない。ただ、不安そうに二人を見ていた。


「お前さんよ、例の剣はどこやった?」


 剣?タルデは首を傾けた。その手が腰のあたりを彷徨って、触れたのはただ昔から使っている剣の柄。一時その隣に佩いていた剣は、あの忌まわしいものは、


「実験に飽きて‥‥どこにやったんでしたかね」


ぽつり呟くその声は、存外空間に響いた。


 この山に住み着いて、しばらくは剣の特性を調べることに費やしていた。


 タルデがその剣で貫かれて動く死体になったのは確かなことで、そしてまたおっさんもそうらしいことは聞いて、それ以外に自分たちの共通項など見当たらなかったので原因は剣に求めることにした。実際、飾り気も何もない剣でありながら何らかの力は感じられた。どちらかというと不穏な力、神剣と呼ぶよりは魔剣と呼ぶほうが余程相応しい力。


 力を有していることは見るだけでも触れてもよく分かるのに、いざそれがどういうものなのかということは、タルデにも皆目分からなかった。だから実験を繰り返した。そのあたりで草花を切り落としてみたり、技巧が必要だったがそこらの獣を剣で狩ってみたり。おかげで野生の動物を狩るのだけは巧くなった。それも罠や弓矢を使わずに、だ。生憎と食料を必要としない身の上であるので、何に使えるのか微妙な特技だが。


 そうしてある程度、理屈はさっぱり分からないにせよ剣を使って何ができるのか納得して、そしてまた変化が不可逆であることも納得せざるを得なくて、そしてタルデは飽きたのだった。そこで初めて、何とか自分たちのこの歪んだ在り方を是正したい気持ちがあったことを自覚したのでもあるが。


「えぇと‥‥たまに手にしていた記憶もあるんですが‥‥」


「‥‥責任持てない所有の仕方をすんじゃねぇよ‥‥」


 しばし本格的にタルデは悩み、悩みながらも何故突き刺されただけの剣に対する責任が発生しているのだろうと思ったりもしたが、やがておぼろげに思い出してタルデは顔を上げた。

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