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死者の午後  作者:
生者の夕べ
19/53

6.

 出て行ったときよりもかなりぼろぼろになったタルデが、見知らぬ少年を連れ帰っても、同居のおっさんは特に咎めなかった。


「へぇ。客とは珍しい」


「貴方が神様ですかっ?!」


「だから神などいやしないと言ったろう」


 おっさんを目にした少年が勢い込むのに、平淡に返して、タルデはおっさんをまともに見据えた。


「面倒事です」


 静かに平淡に、タルデは言った。


「‥‥そのようだな」


 おっさんは苦笑して、少年に向き直る。それに任せて、タルデは着替えるために自室へ向かった。背後であやすような声が聞こえていた。それから少年特有の高い声。


 自室と言っても、元が神様のために建てられた社だ。ひとのための建物ではないからたとえば寝室があるわけでもないが、それでも区切られたいくつかの空間の内ひとつを勝手にタルデの領域と決めていた。


 そこには少ない荷物が無造作に置かれている。


 衣装ケースがあるわけでもない。適当にたたんで積まれている中から、同じような簡単な作りの衣装を取り出して、土と草の汁にまみれた服を脱ぎ捨てた。新しい服を身に着ける前に、折れた脚の骨を確認する。綺麗に折れていたし関節は無事だったので、応急処置としてくくりつけてあった木の枝をしっかりと固定し直す。


 治癒はしないから薬を塗るような無駄なことはしなかった。


 タルデは動きがいちいち無造作で、そういえば生前からよくあざなど拵えていた。それは今でも変わらず、というよりもひどくなっていて、血の流れはどうやらないためあざができないので気になっていないというだけのようだ。小さな傷も、気になっていないだけでおそらく無数にできている。それらはほとんどが不注意でできたというほどの、無頓着な娘だった。


 怪我はしても治らない。それに気付いたのは、こうなって比較的最初の頃だった。


 マーニャはいたころだったか、どうだったか‥‥思い返して、あぁ、小言を言われた記憶があるからきっとマーニャが隣にいたころだ、あの頃はよかった、などと簡単には言う気はないが、それでも、今よりも己や周りのことに気を使っていたように思う。

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