4.
あれから何十年か、タルデはカミサマと呼ばれるおっさんと共に過ごしている。そうしているうちに、己の存在についてもよく分かってきた。
まず、当たり前のように老化はなくなった。そもそもが新陳代謝もなくなっているのだから当然のことだが、それを実感としてタルデは得た。タルデは変わらない。おっさんも。
ふもとの人間との関わりはないのだけれど、それでも時々すれ違いに近付くことはあって、そうして垣間見られるせいもあっておっさんはカミサマ呼ばわりされているらしい。降って湧いたタルデも、いつしかカミサマと同じ存在と見なされるようになった。そしてそれは正しかった。ただ、二人が神様などではないというだけで。
老化はない。つまり成長もない。タルデはいつまで経ってもあの頃のまま、マーニャと二人歩いていた娘の姿のままだった。髪も爪も伸びやしない。ありとあらゆる変化はその身に見られなくなっていた。
「分かってはいた」
薄々と分かっていたことだ。マーニャを見送り、故郷を見つけるまでの間だって、決して短い年月ではなかった。けれど、そう、その頃タルデは歩き続けていたから、己を顧みることもなかったというだけで、なんとなく気付いてはいた。
「取り残されてしまった」
まるで剣が、時の流れからタルデを切り離したかのようだった。
「‥‥マーニャ」
涙も出なかった。
発汗もないし皮脂も出ないから、服の汚れは外部からの汚れだけだという、それは楽なことではあるが、そんなことくらいで慰められるわけもなかった。
「私は変わらない。変われない。
なのにどうして忘れていく」
不定期に、無性に死にたくなることがある。いや、死んではいるから、そう、消えたくなることがある。
この日も衝動がやってきて、消えられないことなど分かっていたのだけれど、それでも衝動はなくせなくて、発作的に崖から飛び降りたのだった。
脚の骨が折れた。なのに痛みはなく、折れた骨の代わりに適当にそのあたりにあった木の枝をくくりつけて、それで動けるようになってしまった。そんな己がタルデには、厭わしくて仕方がないときはあるのだ。




