3.
神の住む山、に住まうこのおっさんに出逢ったとき、タルデは今と同じように不思議そうな顔をして固まった。
「――お」
それはしかしおっさんも同じようで、二人して珍しい物のようにまじまじと見合ってしまったものだ。それくらい、互いの存在は驚異だった。
どれくらい凝視し合っていただろうか、互いに目の前にあるものが呼吸もしていないことを見て取って、それ以前にも感覚で分かってはいたのだけれど。
「‥‥同じ‥‥?」
「‥‥同じ、か」
そのときタルデの身を貫いたのは、何故か怒りだった。
理不尽だと思った。諦めていたはずだった。己が死んだときも、それでも意識が終わらなかった時も、マーニャが死んでしまった時も全て。諦めたはずだったのに、何故。
一瞬わけの分からないほどの怒りに駆られたが、けれどそれは一瞬で去り、結局口をついて出たのは素朴な疑問だった。
「祀られた神とはつまり死者ですか?」
「いんや。単に間借りしているだけの、死者だ」
おっさんは苦笑して答えた。ということは祀られた神は別にあるということか。特に神など信じてはいないが、というより信じたら自分の存在はどういうことになるのか、タルデは顔をしかめた。神がどうこう、というよりは信心深い麓の住民が哀れだ。次に口を開いたのはおっさんのほうだった。
「‥‥お前さん、なかなか面白い物を持っているな」
おっさんの視線がタルデの腰で止まっていた。
「あ?‥‥あぁ‥‥」
一瞬若い娘に特有な潔癖さでもって睨み据えたが、だが視線の先にあるものが己の腰にある剣だと気付くと、タルデはそれを外して放った。
「‥‥ということは、貴方もこの剣で死者に?」
おっさんは放られた剣を受け取ることはなく、剣は二人の間に落ちた。
「‥‥まぁ、そういうこった。何百年も前のことだ」
意外と覚えているものだな、と気味悪そうに――そう、怖いものなどないように見えるこのおっさんが、確かに剣には忌避感を抱いていた――剣を一瞥し、おっさんはまたタルデに目をやった。
「それを分かっていてよく持ち続けられるものだなぁ」
タルデは首を傾けて、放った剣を拾ってまた腰に佩いた。そしてまた、近付いた距離でおっさんをじっくりと見た。




