10.
結果だけいえば、このときの2人の不安は杞憂に過ぎなかった。
タルデはいつまでもタルデのままだった。
けれど、別れは訪れるのだ。運命なんて概念は信じてはいないけれど、運命や神があるのなら、タルデはそれを強く憎む。
それは、なんとなく故郷に近づいた気がしてきた頃。
タルデはいつものように、食料になりそうな獲物を求めて森の奥まで入っていた。タルデがこうなって、食料は1人分しか必要ではなくなったとはいえ、なるべく荷物を減らそうと思うとやはり現地調達が一番だ。マーニャはそういった心得がまるでないので、狩りや採集はタルデの役割だった。というより、旅にかかわる諸々のことは全てタルデの仕事だった。マーニャは、はっきり言って役に立たない。ただついてきているだけ。
タルデが森に入っている間、マーニャは街道にいるはずだった。1人にするのは不安だったが、人目があるだろう昼間なら大丈夫だと、タルデもマーニャも認識していた。そしてその認識は大概正しかった。
その日は雨が降っていた。
それほど強い雨ではなく、ただ、季節は冬に向かっているため少し寒い。らしい。タルデはそういった感覚も鈍っているのでよく分からない。確かに、最近は獲物にしている小動物たちもよく肥えているし、木の実なんかも多い。そういう意味では感覚なんてなくても季節を感じることはできる。
とにかく、雨の中、マーニャを街道においてタルデは森に入っていた。思い返せばタルデが死んだのもこうやって個人行動をとっているときだったわけだが、こればかりは仕方がない。食料がなければマーニャは飢えて死ぬ。
タルデがこういう存在になって分かったことは、死人は狩人に向いている、ということだった。気配というのか、そういうものを、特に消そうとしているわけでもないのだが、獲物は感じ取れないらしかった。生きていたころよりも断然食料調達は楽になった。それだけ早く帰ってあげられるということだ。その日も、タルデはあっさり捕まえた小動物を右手にぶら下げて、ついでに水も汲んできて、食べられる木の実なんかも採取して、少しうきうきしながら街道まで戻った。たとえそれが森の中でもタルデは方向を見失ったりしない。それは生きているころからそうで、方向感覚は鈍ったりしなかった。
だから、間に合わなかったのはきっとタルデのせいじゃないのだろうけれど。




