Mr. Suicideの見た夢
目を開けたまま見た夢は、灰色の世界が広がっていました。
ここは奇妙な世界です。
哀しそうに、一生懸命に踊る人達。
それを見ながら嗤っている僕を見ている僕。
「何故彼らは踊っているのですか」
僕は老婆に尋ねます。
「生きているからですよ」
「では、何故あんなに哀しそうな顔をしているのですか」
「生きている事が哀しいからですよ。あなたも、私も」
そう言って、老婆も踊りの中に加わりました。
僕も一緒に踊りました。
僕はそれを見て嗤っています。
ここは奇妙な世界です。
色の着いている女は「女王様」と崇められていました。
仮面の様な笑顔で女は微笑みます。この世界ではそれを美しいと言うそうです。
僕は紳士に尋ねます。
「何故あの様な表情が美しいのでしょう」
「真実の微笑みなどとんでもない。何を考えているのか分からぬ、あの絵に描いたような微笑みが素晴らしいのです」
紳士は力強く僕に説きます。僕は大いに賛同して頷きました。
女に求婚をする僕を見ている僕。
女はまた微笑んでそれを受けました。皆、哀しそうな顔で祝います。
ここは奇妙な世界です。
僕は老人に尋ねます。
「ここは一体、どこなのでしょう」
老人は答えます。
「ここは君の夢の中。目を開けているつもりでも、意識はピッタリ閉じている」
「では、僕は眠っているのですか」
「いいや、眠っていないさ。眠っている時に見るものだけが夢ではない」
老人はニッコリ笑って僕を見ます。
「コレが夢なのか本当なのか、決めるのは全て君次第。
目を開けているときが夢で、閉じているときが本当でも。
目を開けているときが本当で、閉じているときが夢でも。
目を開けても閉じてもずっと本当でも。
目を開けても閉じてもずっと夢でも。
君が決めれば本当は消える。
君が消えれば夢は消える。
世界はずっと本当になる。
世界はずっと夢になる」
白い太陽が沈んでゆきます。
黒い海がざわつきます。
「僕が決めることなのでしょうか」
「君にしか決められない事だ」
白い太陽が沈んでゆきます。
黒い海が荒れ始めました。
僕はゆっくり答えました。
「僕にとっての本当はここです」
老人はとても嬉しそうな顔をしました。
「そうかい、それは素晴らしい」
白い太陽が昇ってゆきます。
黒い海は穏やかになりました。
ここは奇妙な世界です。
もう夢を見ることも無いでしょう。