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ビタースイート

作者: 土田かこつ

 彼氏ができて、友達をなくした。

 

 まずメールを返さなくなった。

 ついでおしゃべりが減った。

 気付けばその子達の前で笑わなくなっていた。

 冷たい奴だな、と自分でも思う。

 ついこの間まで親友のようにふるまっていた子にも、もうほとんど興味がないのだ。

 はじめは文句を言いつつかまってきた子達も、今ではすっかり疎遠になった。

 かといって始終彼にべったり張り付くのも気にくわない。

 結局、一人の時間が増えた。


 勝手知ったる彼の家。

 馴染んだソファに寝転んで、横目で大きな背中を追う。

 彼はといえば好きな作家の新作とやらに没頭してかまってはくれない。


 やっと私の目に気付いた彼は、興味なさげにきいてくる。

 あくまで視線はページに落としたまま。

「どうした、」

「・・・。あなたと別れたら、ゼロから友達作れるかなって。」

「どうして、」

「今、私、友達いない。」

「じゃ、いざという時のためにアテにできるような奴を見つけておくんだな、」

 どうってことないように言う。私は口をとがらせた。

「別れたいの?」

「何の助けもないところにお前を放り出したくはないよ。」

 甘い言葉と冷めた声。つかめない態度に私の声は低くなる。

「じゃあ誰もいなければ、あなたはずっとそばにいるの」 

 振り向く、顔。

 丸くなった目。

 まばたきにあわせてまつげがふるえる。

 そんなに驚くことないのに。

 唇を舐めて、息をはく。

 わかってる。手を繋ぐのは好きだけど、よりかかるのは趣味じゃないのだ。彼も、私も。

 だから、できるだけ軽くかわしてしまおう。


「冗談よ」

 でも、

 彼がちらりと見せた表情は少しばかり残念そうで。

 私はひっそりほくそ笑んで、結局彼の背中にもたれた。

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