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声劇用台本「老いない魔女」男女1:1  作者: 木山京


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8/10

■8 老いない魔女と紅葉の家路

◆屋外。老人のお墓参りに来た魔女と青年の掛け合いです。

◆キャラクターは三人ですが、台詞は二人分のみ。


◆魔女

お墓参り終了ーっ!

よーしっ!

助手君、お昼食べよっ、お弁当お弁当っ!


◆青年

墓地でピクニックもないでしょ……。

せめて向こうの公園まで行きませんか?

大した距離じゃないんですから。


◆魔女

なんだよぉー。

いつから人目を気にするようになったんだぁー?


◆青年

そういうわけじゃないですけど……ん?

なんです? 変な顔して。


◆魔女

あ、いや……デジャヴ?

まあとにかく、お墓だろうと何だろうとお昼はお昼でしょー?

食事は自然の摂理なんだからっ。

チビ魔女ちゃんだってお腹空いたって顔してるぞー?


◆青年

趣味で食事してる人が、摂理も何もないでしょうよ……。

っていうか、その子をダシに使わないでください。

大人げないですから。


◆魔女

う、うるさいなぁー!

いいじゃん、いいじゃん!

もうシート広げちゃうからねっ!


◆青年

あ、こらっ!

まったく、もう……あなたって人は。

一応、賢者とか生きた伝説とかそういう人でしょ……。


◆魔女

えぇー? だってみんなが勝手に言ってるだけだし。

それよりさっ!

ほらほらっ、お弁当お弁当っ!


◆青年

あーはいはい、わかりましたよ。

そんなに期待しないでくださいよ?

急だったから、あり合わせで作っただけですし。

ええと……まずサンドイッチ。

左からハムとチーズ、野菜とタマゴ、ツナマヨにタマネギですから。

一つずつですよ。


◆魔女

チビ魔女ちゃん、ツナいる?

ハムのと交換でいいよ?


◆青年

……作らせた人が好き嫌いしないでくださいよ。

こっちがナゲットと、あとブロッコリーが余ってたんで茹でてきました。

それから水筒にオニオンスープ。


◆魔女

やった! それってあれだよねっ!

玉ねぎ丸ごと入ってるやつ!


◆青年

全部食べちゃダメですからね?

言っときますけど。


◆魔女

うわぁ、信用ないなぁー。

ほらほら、チビ魔女ちゃん、食べてみ?

美味しいでしょ? それが美味しいってことだかんね。


◆青年

ふふっ、強引すぎじゃないです?

作った甲斐はありますけどね。


◆魔女

美味しくないわけないんだから、いいんだよ。

実際、助手君の料理は美味しいわけだし。

……ツナ抜いてくれればもっといいんだけど。


◆青年

実をいうと、魔女様用のはツナの代わりにポテサラになってますよ。


◆魔女

あ……助手君、好き。


◆青年

ははっ、オーバーだなぁ。


◆魔女

えへへ……ところでさ。


◆青年

はい?


◆魔女

……いいの? 私たちと一緒にいて。


◆青年

ああ、いえ……あはは、孫としては複雑な心境じゃありますよ。

急にあんな手紙渡されたら、まあ多少は。


◆魔女

……恨んでる?


◆青年

え? 祖父をですか?


◆魔女

っていうか、ええと……。


◆青年

……魔女様たちを?


◆魔女

だってさ、元はと言えば私のせいなんだし……。

弟子の責任取るのも、師匠の役目ってところがあったり……。


◆青年

いいじゃないですか。


◆魔女

え?


◆青年

そりゃ、あの呪いで苦労したことはありますよ。

祖父にだって、思うところがないわけじゃないですし。

……でもあの人が抱えてた葛藤は、本物なんですから。


◆魔女

それは……そうかもしれないけど。


◆青年

もし祖父が、祖母や僕たちを蔑ろにして研究してたんなら、きっと難しいですけどね。

だけど僕の覚えてるあの人は……。

少なくとも、家族に対しても真剣だったんです。

魔女様に向けていたのと同じくらいに。

……だから、この手紙もお返しします。


◆魔女

……いいの?


◆青年

ええ。だいたい、祖母が許してるようなものなんですから。

ほとんど公認じゃないですか。

なのでこの手紙は、ちょうど祖父が眠っている場所ですし。

魔女様が引き受けてくれるなら……。

ここにある祖父の魂は、然るべき方法で送ってあげてください。


◆魔女

……うん。

すぅー……ふぅー……。

木星、2番。

かの義は永久に朽ちず、かの善は永久にうたわれる。

……ありがと、バカ弟子。


◆青年

……終わったんですか?


◆魔女

うん、おしまい。

ちょっと後悔してる?


◆青年

まさか。

呪いより、いろんなものを貰いましたから。

祖父のおかげでチビ魔女様に出会えたり。

それから……ふふっ、魔女様の苦手な食べ物も覚えられましたよ。


◆魔女

うわぁー、可愛くないなぁー。


◆青年

これでおあいこってことで、どうです?

一切合切、何もかも。


◆魔女

んー……うん、そういうことにしときましょ。

助手君、これからどうするの?


◆青年

どう、って何がです?


◆魔女

いやほら、そもそも呪い解くのが目的だったわけでしょ?

今はもう治ったわけだし、その……。


◆青年

あ、そういう……そうですねぇ。

実家に帰るっていうのは気が引けるけど、働きながら学校行くとかいいですね。


◆魔女

あ……う、うん、そだよね。

やっと普通の人生過ごせるんだから、そりゃあ……。


◆青年

でも一個だけ、気になるところがあるんですよ。


◆魔女

え……な、なに?


◆青年

いえ、これはある人の話なんですけどね。

その人、魔法とかには結構詳しいのに、家庭人としては壊滅的なところがあるというか。

なのに最近、小さい子の面倒見ようとしてるんですよ。


◆魔女

え? ちょ、ちょっと、それ……。


◆青年

まあ栄養失調とかの心配はないと思うんですが。

だとしても、そんな人に丸投げして、その子がズボラに育ったらどうしようかなぁと。


◆魔女

やっぱ恨んでるよね!? ねえ、そうでしょ!?


◆青年

ちゃんと匿名で話してるじゃないですか、ひどいなぁ。


◆魔女

具体的すぎるでしょうよ……!

だいたい助手君はねぇ! いつもいつもそうやって!


◆青年

まあまあ、つまりですよ。

結局、根無し草なのは変わりませんから。

いろいろあったし、しばらくゆっくりしたい気分なんです。

例えば、そうだなぁ……湖のそばにある、小さな木の家とか。


◆魔女

それって……。


◆青年

うちに帰りましょうよ、三人で。


◆魔女

……ホントにいいの?


◆青年

馴染んじゃいましたからね。

だいたい、ピクニックとは聞いたけど、送別会なんて聞いてないですよ。


◆魔女

……平気なの?

私も、この子もさ……助手君と違って、時間なんてないんだよ?


◆青年

とはいえ、若いですから。

祖父が間に合わなかった研究だって、三人なら別の答えがあるかもしれない。

そうでしょ?


◆魔女

だけど、きっと迷惑かけるよ……?


◆青年

だから生活力のある人間が必要でしょう?

惚れるなって釘刺されたけど、あはは……やっぱり僕は、じいちゃん似らしいです。

僕にとっても、ここが帰る場所なんですから。


◆魔女

……うん。


◆青年

魔女様、もしかして泣いてます?


◆魔女

う、うるさいなぁ……!

ボロクソ言ってイジメるからだよっ!

チビ魔女ちゃーん、助手君がイジメるーっ!


◆青年

またそうやってダシにするんですから。

……ところで、魔女様の方は結局どうだったんです?


◆魔女

うぅ、ぐすっ……何が?


◆青年

祖父のこと。

どう思ってたんです?


◆魔女

どうって……そりゃ、さあ。

大事な人だよ。

昔も、今だって。

勝手に無茶しちゃうところは、結局変わらなかったけどね。

だけどそれも含めて……。


◆青年

好きだったんですか?


◆魔女

あはは、どうだろ。

なんて言えばいいのかな。

うーん……ん?

チビ魔女ちゃん、どした?

……もみじ?


◆青年

来る時、服に引っかかったんですかね。

そろそろ夏も終わりですから。

あーこらこら、それは食べられませんよ。

……魔女様?


◆魔女

あ、ううん。なんでもないよ。

ないけど、そっか。

やっとわかった気がする。


◆青年

祖父のことですか?


◆魔女

うん。私はさ、あの人を紅葉だと思ってたんだ。

他の何よりも綺麗に時間を刻んだ、たくさんの中からでも見つけられる、たった一人。

あの人を眺められなくなったのが寂しい。

そう思ってたけど……違ったみたい。

私も、刻みたかったんだ。

みんなみたいに。

あの人と同じ枝で。

勝手だし、捻くれてたけどね。

本当は、一緒に連れてきたかったんだと思う。

……ふふっ、ただのもしも、だよ?

もしもこうだったらっていう、夢の話。

もしそうなってたら、助手君に……この子とも会えなかった。


◆青年

……ええ、わかってます。


◆魔女

うん。……ね?

ちょっと膝貸して?


◆青年

昼寝ですか? あ、さっき魔法使ったから?


◆魔女

ううん、眠りたい気分なだけだよ。

起きても二人がいてくれる。

そうでしょ?


◆青年

ええ、コーヒーも持ってきてますよ。

起きて一息ついたら、家に帰りましょう。

暗くなる前に。


◆魔女

うん、約束だね。

おやすみなさい、二人とも。

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