表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声劇用台本「老いない魔女」男女1:1  作者: 木山京


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

■7 老いない魔女と揺り椅子の手紙

◆6に登場した手紙の内容。全て老人の独白台詞です。


◆『老人』

親愛なる湖畔の魔女殿。

このような形であなたに言葉を残すことが、私にはいくらか卑屈に思えてしまう。

これから私が行なうことは、おそらくは私自身のエゴだとか妄執といった類のものだろう。



そしてこの手紙があなたの目に留まるとしたら、その妄執が形を得たということだ。

魔に通じる者の端くれとして、私があなたの呪いを調べていたことは今更であると思う。

私はその過程で呪いに蝕まれ、まもなく命を終えようとしている。

それがあなたの知る私の現状だが、実のところ、これは正確な事実ではない。



私は呪いの培養を試みた。

私自身の肉体と魂によって。

そうすることが、あなたの呪いを知り、時を戻す一番の近道だと考えた。

初めからそうしていたのではない。

妻の手が、私の指から滑り落ちたその晩に、私の中で決心がついた。

私が呪いを解析し終えるのが先か、呪いが私を蝕み終えるのが先か。

幸いにして……いや幸いであるよう祈るばかりだが。

私は、この呪いを私の魔力に適合させることに成功した。



願ったような結果ではない。

これが出来たからといって、あなたの時間を流すことは叶わないだろう。

だが代わりに、ひとつの可能性が目の前に現れた。



この呪いの具現化だ。

あなたと再び会った日、共に交わした言葉を覚えているだろうか。

あなたが街を出たあの日。

共に旅立っていれば、何かが変わったろうか、と。

あなたは、変わらないと行った。

いずれ私を置いて行ってしまう、と。

そうではない。

私たちが、あなたを取り残してしまう。

今の私には、もうあなたと共に旅をすることはできない。

だがそれだけが私にとって気がかりとなっていた。



私の願いは二つ。

あなたの呪いを解くか、あなたの孤独を埋めるかだ。

前者は、私の手に負えるものではなかった。

だから私はせめて、あなたの時を和らげたいと思う。

私の魔力を吸い変化した呪いは、血によって私の孫へと引き継がれるだろう。

私では足りない魔力を孫で補い、そしてあなたの魔力に触れた時、呪いは全く別の存在となる。



あなたにとって、これは迷惑な話かもしれない。

しかし私は、せめて彼女を残したいと思う。

あなたと共に歩める、もう一人の存在を。

それがせめて、あなたの生きる目的になってくれればいい。

眠ることを恐れずに済む、あなたの支えになってくれればいいと。

今はただ、それだけを願う。

どうか叶うならば、この手紙を読む日が、あなたの言う湖畔の小さな木の家の中であるように。



……追伸。



これは、私の孫に。

否応なく巻き込んでしまったことを、まず謝らせてほしい。

すまなかった。

私は私のエゴによって、お前の人生さえ歪めてしまうかもしれない。

そこまでわかっていてもなお、私はかつて追えなかった旅への未練を選んでしまった。

許せないというのなら、この手紙を処分してほしい。

これは私の、最後の魂を使って記したものだ。

今更何をと思うだろうが、祖父として、お前の旅路がどうか健やかであることを願う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ