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声劇用台本「老いない魔女」男女1:1  作者: 木山京


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10/10

■番外編 老いない魔女と小さな夢

◆魔女(独白)

これは私が湖畔の魔女と呼ばれるようになる、ずっと昔の話。

その頃の私には、救われる道がわからなくて。

縋れるような存在もいなくて。

時間から置き去りにされたまま、孤独を捨てることも出来ず、ただただ逃げ回っていた。

そんないつかの、小さな思い出だ。


◆街を散歩中の魔女

◆魔女

ふわぁー…んにゃ…眠ぅ…。

んー…ふぅ、目ぇ覚ますの、久しぶりだもんなぁ。

太陽ってこんな暑かったっけ…?

時間感覚とか体は前と同じなのに、変なとこでしっかり鈍ってるんだもんなぁ。

…変わっちゃったなぁ、この街。

ガラスなんて貴重品だったのに。

普通に家についてるし。

あれは…本屋かな?

大衆向けに本が売られちゃってる時代かぁ…ははっ、どうなってるんだろ。

まあ…うん、そっか。

二百年も経てば、そりゃ変わるかぁ…。

…ん? 何か見られてる?

…ああ、そっか。

二百年前の魔女が外歩いてたら、そうだよね…。

あーあ…ははっ、恨まれてるなぁー…。

…見ないでよ、そんな目で…。

はぁー…もういいや、どっか行っちゃうかぁ。

…月の3番。

第一の天使よ、願わくば我を救いたまえ。

第二の天使よ、速やかに我を連れ去りたまえ。

…どっか遠くの森、とにかく人のいないとこ。

最悪、人がいないだけでいいから。

転移開始。



◆場面転換。森に移動した魔女。

◆魔女

っとぉ…うわ、クラクラする…。

はぁ…魔力増やせたらいいのに。

不老不死っても、成長も何もないだもんなぁ…。

…どこだろ、ここ。

どっかの森かな。

危なくはなさそうだけど…はぁー…。

…みんな、白状だよねぇ。

仲間だとか、一緒にいるとか、言ってもさぁ…。

やっぱ先に死んじゃうし…。

みんなだけ、お墓の中にいるし…。

挙句に、さぁ…。

私が眠っちゃうってわかってて、大魔法で国ひとつ救わせといて…。

その後、別の災害が起きたからって…。

助けを求めても、目を覚まさなかったから、って…。


◆押し殺した泣き声。

あんな恨まなくてもいいじゃん…っ。

私、だって…っ。

好きで眠ってるわけ、ないじゃん…!

救われたくて…っ、でも救われなくて…っ。

だったら、誰か…っ、人助けすれば少しは…っ。

少しくらい、救われた気になれるんじゃないかって…!

はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ…ぐ、くぅ…!

置いてかないでよ…っ。

隣に、居てよ…!


◆泣き止んで意識が途絶える。

はぁー…はぁー…はぁー…。

あーあ…また、眠くなってるし…。

もう、さぁ…魔法使う度、こんな…死ぬことも、できないなら…。

…もう、目覚めないでよ。

ここで、このまま…このまま…。




◆場面転換。夢の中。魔女と夢(声は魔女のまま)

◆魔女

ああ…また寝ちゃったか。

…もう、このままでいいんじゃないかなぁ。

ここなら誰もいないし…求められないし…恨まれないし。

死ぬってこともないなら…せめて永遠に、覚めないままで…。

私の魔法って、ここでも使えるのかな。

…お、使えるっぽい。

んじゃもう、いいや。終わらせちゃおう。

月の5番。

立ち上がりて敵を散らし、我を憎むものを…我を、憎むものを…。


◆夢

やめといた方がいいよ。


◆魔女

…うるさいな。


◆夢

やめときなって。

ながい眠りの魔法なんて、使わないでおこ?

それ、二度と目覚めないよ。


◆魔女

…ぴったりじゃん。

私、もう起きたくないよ。

誰かを助けても疎まれて、憎まれて…友達になっても、次に起きたら誰もいなくて。

…私さ、なんで生きてるの?


◆夢

…生きたくないの?


◆魔女

…生きたいよ。

でも、ひとりで生き続けるのは…もうやだよ。

私だって、誰かと…。


◆夢

ん…一緒に生きていたいよね。


◆魔女

…当たり前じゃん。

だから止めないでよ。

なんで止めるの?


◆夢

…そうだなぁ。たぶん、私のカン?

今はさ、まだ眠らない方がいいと思うんだよね。


◆魔女

…なにそれ。未来視なんて、私、出来ないけど。


◆夢

ん…だから、ただのカン。

たぶんね。もう少ししたら、ちょっとずつ変わるから。

きっと弟子が出来るよ。

すっごい世話焼きで、おじいちゃんになってもお節介してくるのに、自分のことは考えない人。

そしたら次にさ、家族が出来るかも。

その弟子が残してくれた、最後の遺産。

私と一緒に生きてくれる、しっかり者で口うるさい子と、私を継いでくれる大事な子。

そんな家族が二人。

そんな二人と一緒にさ、湖のほとりに住んだりして。

釣りしたり、ピクニックしたり、魔法を教えたり、料理を教わったり。

そういう「楽しい」がね、待ってるような気がするんだぁ。

夢みたいだよね。

今の私じゃ、考えられないくらい。

大事な人が三人も出来るなんて。

…だからさ。どうせ諦めちゃったなら、信じてみてよ。

いいでしょ?

私の…自分のカンなんだから。


◆魔女

…そっか。

本当にそうなら…そうなってくれるなら…。




◆場面転換。元の場所で目覚める魔女。

◆魔女

ん…うぅ…あ、そっか。寝ちゃってたんだ…。

太陽は、ええと…朝っぽいから一晩かな。

今のって夢かぁ。

…夢じゃなくなったら、いいなぁ。

全部、本当に待ってくれてたら…。

…起きてなくちゃ、会えないもんね。

寝るには、まだまだ日が高い…か。

…もう少しだけ。もう少しだけ、だよ。これが本当に最後。

信じてあげる。私のカンを。

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