8滴目「千日紅②」
瑞希のおかげで檸音に本当のことを話す決心が着いた葵、しかし檸音は家に帰ってもまだ機嫌が悪いようで、、、
パンッ
『、、、はぁ』
「おい、檸音」
『、、、何?』
「帰ってから機嫌悪いけど、学校でなんかあったか?」
『別になんもないけど』
「いや明らかに機嫌がわる、」
『だから何もねぇって言ってんだろ!!』
ダッダッダッ
「あ、おい!檸音!!」
「、、、はぁ、情けないねぇなぁ」
「やっぱ俺一人じゃ無理だぞ、、」
「花水木」
コンコン ガチャ
「お兄ちゃん、、、?」
『、、、何?優真』
「あ、えっとお父さんが夜ご飯だって、、」
『あっそ、分かった』
「、、、あのさお兄ちゃん」
『あ?何だよ』
「いや、えっとその、あのね、」
『あのさはっきり話せよ、ナヨナヨすんな気持ち悪ぃ』
「あ、ご、ごめんなさい」
「、、、その、僕が言いたかったのは」
「僕はいつものお兄ちゃんが好きだよ」
『・・・・』
「、、、急にごめんね」
『いや、、、なんか、心配かけたな』
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モグモグ カチャカチャ
『・・・』
「・・・」
「・・・」
「あ、あのさ!僕ね今日の体育で50メートル走したんだよ!」
『「・・・」』
「そ、それでね僕9.5秒でクラスで2番目に早かったんだよ!凄いでしょ?」
『「・・・」』
「、、、、ねぇ2人とも聞いてる?」
「え、あぁ聞いてるぞ!すごいじゃないかぁ」
『え、あそうそう!すごいなぁ優真』
「そ、そう?えへへ」
『「・・・」』
『ごちそうさま、、』
「僕もごちそうさまー!」
「ん、よく食べたなぁ、、、おい檸音」
『、、、何?』
「風呂入ったら俺の部屋来い」
『なんでだよ』
「いいから、来い」
『、、、分かった』
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コンコン ガチャ
『、、、何の用?』
「おう、そこ座れ」
「はぁ〜、一体何があったんだよ?今日おかしいぞ」
『別に何でもいいじゃん、父さんには関係ないだろ』
「、、、そうだなぁ、確かに関係ない、でもな?」
「俺はお前の父さんだ」
「親は子をサポートするもんが義務ってもんだろ?」
『、、、だから何?じゃあ今まで俺たちになにかしてくれたか?』
「え?そりゃあ、、、あれだ、、その、、」
『母さんが死ぬ前までは仕事仕事の一点張りで、何も俺たちにしてくれなかっただろ!?だからなんも思いつかねぇんだよ!!』
「・・・」
『しかも母さんが死んだら自分が全部しなくちゃいけないっていう責任感が出てきて、それを利用して父親ヅラ?馬鹿じゃねぇの!?イキるのも大概にしろよ!』
「檸音、、、」
『、、、優真がどれだけ寂しい思いをしてたか知らねぇだろ、クソが』
「優真?」
『母さんが入院してた頃頃毎日言ってたぞ「僕にお父さんっているの?」って、親がいないって勘違いするほどだったんだぞ』
「、、、そうか」
「ただ、仕事をしてたのには理由が、、、」
『言い訳すんなよ!!そんなんで父親ヅラするとか、、、恥ずくねぇの?』
「・・・」
「確かに、昔の俺は仕事しかしてなくてお前らに関わる機会はほとんどなかった、、、」
『だからさっきからそう言ってるだろ』
「、、、これはお母さんとの秘密にしておく約束だったんだが、いい機会だし檸音にはなしておこう」
『、、、なんだよ』
「檸音が中学三年生の夏の時だったな、、、」
「母さんの癌がわかったのは」
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お前の母さん、花水木が7月の後半に急に
倦怠感や体重減少、上腹部の腹痛が起き始めたんだ
あまりにもしんどそうだったから病院に連れていったら
「せ、先生、本当ですか?」
「はい、奥さんは[膵臓癌]のステージIVです」
「す、膵臓癌、、、」
「そして奥さんの余命ですが、、、」
「もう4ヶ月持つか持たないかです」
花水木は膵臓癌のステージ4で
助かってもいつものような生活には戻れず
完治をすることはほとんど不可能な状態だった
「そ、そんな、、、な、治らないんですか!?」
「もちろん最前は尽くします、ですが完全治療までは、、、」
「そ、そうです、か」
「、、、なるべく奥さんに家族の時間を多く過ごさせてあげてください」
「、、、はい」
「あら、あなた」
「花水木、、、」
「先生なんて仰ってた?」
「えっと、か、軽めの脱水症状だって、、、」
「膵臓癌のステージIVだよ」
「お、お義母さん!?」
「あら、お母さんも来てたのね」
診察室の外から診断内容をこっそり聞いていたお義母さん
つまり檸音の母がたのおばあちゃんだな
お義母さんが本当の診断結果を伝えたんだ
「そう、、、もって4ヶ月ね、、、子供たちに迷惑かけちゃうわ」
「だ、大丈夫だ!絶対治らない訳じゃないし!きっと良くなる!」
「椿さん、甘えないで」
お義母さんは少し厳しい方だった
俺が現実から逃げようとしたら直ぐに引き戻してくれた
「癌はね家族で戦うものなの、家族の大黒柱のあんたが逃げてどうすんだい!!!シャキッとしな!」
「お義母さん、、、すいません」
「、、、椿くん」
「ど、どうした?花水木」
「私ももう長くないし子供たちもいる、すぐにでもこれからの事を話しましょう、子供たちが安心安全に暮らせるように、、、」
「花水木、、、わかった、今すぐ考えよう!」
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「そうして俺たちは今後の鈴風家の在り方を考えたんだ」
『そんな、、、母さん癌だったなんて、、、』
「さっき檸音が言っていた俺が仕事の一点張りだった話、それにも理由がある」
『な、何?』
「お前たちの学費・花水木の医療費・今後の食費生活費を一気に貯めていたんだ」
『貯める、、?』
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「今までは私も働こうと思えば働ける状態だったけど、こんな状態になっちゃったら金銭的な問題が心配だわ、、、」
「、、、俺が働く」
「え?椿さん今も働いてるでしょ?」
「もっと働くさ!花水木が元気になるまでずっと働く!ウチの会社は副業も大丈夫なところだし、その間檸音と優真は花水木との時間を過ごせるだろ!」
「過ごせるって、、、あの子たち家ではどうするのよ?私は家に帰れないのよ?」
「た、確かに、、、」
「わたしに任せなさい」
「お母さん!?」「お義母さん?!」
「わたしも孫との時間を過ごしたいしねぇ、旦那もたまには一人の時間が欲しいと思うからさ」
「お義母さん、、!!ありがとうございます!!」
「でも、椿さんは大丈夫なの?働きっぱなしじゃあ休む暇がないんじゃ、、」
「何を言ってんだい!!俺は漢だ!家族のためならなんでもしてやる!!」
「、、、、椿さん、、」
「お、おいおい!泣くなよこんなことで!」
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「そうして俺は本職に加え単発バイトや実家の親父の酒場の手伝いなどをして小遣いを稼いでたんだ」
『、、、だからあの時急におばあちゃんが家に来てたんだ』
「そういうことだ、その間俺は実家で寝泊まりしてたから檸音達にはなかなか会うことが出来なかったがな、すまなかった」
『いや、、、そういうことだったんだ、、、』
「それから花水木は闘病生活を始めて、お前たちとも時間をより大切にするようにしていたんだ」
「、、、でもなぁ神さんってのは残酷だなぁ、躊躇なく花水木を連れて行っちまった」
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プルルルルルル!!プルルルルルル!!
「おーい椿!!電話鳴っとうぞ!!」
「あー!わかったぁ!」
「ん?病院から、、、、もしもし?」
「旦那さん!!奥さんの容態が急変しました!!今すぐ病院へ!!」
俺は親父にすぐに事情を話して病院に駆け込んだ
檸音たちは昼前だったから学校やら幼稚園で来ることが出来なかったんだ
「花水木!!!!!」
「はぁ、はぁ、あれ?はぁ、椿、さんじゃない、どうして、ここに?」
「病院からの電話ですぐに来たんだ!!!先生!花水木は、花水木は大丈夫ですよね?」
「今治療を開始していますが、ここまで来たらもう、、、」
「そ、そんな、、、」
「、、、旦那さんと奥さんに聞きます」
「このまま薬を投与すればもしかすれば容態が安静へと向かうかもしれませんが、多額のお金と副作用がかかります。」
「選べるのは次の二つです」
「薬を投与し続けお子さんたちと合流の機会をかせぐか、薬を止めて最後の時間をお二人で過ごすか、、、」
「も、もちろん!薬を!花水木を治してください!!」
「あなた」
「は、花水木?大丈夫だ!すぐ良くなる!」
「もういいです」
「、、え?」
「もう、、いいですよ、あなた、私はもう幸せでした」
「いや、まだ助かるかもしれないんだ!お金なんてすぐに稼いでくる!!檸音たちもあともうすぐで下校時間なんだ!!、、、」
「私は、もういいの、あなた、私は、、あなた、と、、居られれば、それでもういいの」
「花水木、、、で、でも」
「せんせい、くすりを、、とめてください」
「花水木さん、、、、旦那さん?いいですか?」
「いや!でも、、、まだ、まだ!」
ギュッ
「てを、にぎっててください、、だいじょうぶ、、、ですから、、」
「花水木、、、、、、」
「、、、、、、、、、薬を、、、、、、止めてください」
「、、、、分かりました、」
「あったかい、、、つばきさん、、て、、あったかい、、」
「花水木、、、!大丈夫だからな!俺がいるからな!!」
「すこし、わたしの、、、はなしを、、いい、ですが?」
「もちろんだ!無理するなよ!」
「ありがとう、ございます、、、」
「まず、、こどもたちに、、ずぅっと、あいしていると、、つたえてくれますか?おかあさん、は、、そらから、あなたたちの、、ことをずっと、、みまもっていると、、」
「もちろんだ!一言一句全て伝える!」
「そして、わたしの、りょうしんに、、そだててくれて、ありがとうと、、いままでも、これからもだいすき、、ですと、、、、さきに、おそらにいってますと、つたえてください」
「わかった!他にはあるか?」
「さいごは、、、あなたに、、」
「俺はいいさ!!他の人を優先してくれ!」
「これが、さいごなの、、きいて、ください」
「、、、わかった、無理はするなよ?」
「、、やっぱし、あなたはやさしい、、であったときのことを、おぼえてますか?」
「もちろん、高校の帰り道に花水木が自転車から転けて膝が血だらけになってたな」
「そう、、そのとき、あなたがまさか、せいふくのシャツを、びりびりにして、、ひざにまいてくれました、、よね?」
「、、そうだったな」
「ちがでているにも、かかわらずに、、あなたは、わたしをたすけて、、くれた」
「そのひから、わたしは、、あなたのことが、、すきだったんです」
「、、、奇遇だな、、俺もだよ」
「そうです、、か、、、うれしいです、、ね、、」
「こんかいも、たすけてもらって、、、ばっかりです、、ごめんなさい」
「謝らないでくれ、、、お前は頑張ったんだ、凄いことなんだ、、、自分を誇りに思ってくれ、、」
「あなた、、、ゴホッゴホッ!!」
「花水木!!、、やっぱり薬を!今ならまだ!!」
「いいの、だいじょうぶ、、です、、さいごに、、ひとことだけ、、、いいですか、、、」
「、、もちろんだ」
「、、、そのまえに、あなた、、、はぐをさせて」
「わ、分かった、、、」
ムギュっ
「痛くないか?」
「はい、、あったかい、、、わたしは、、しあわせ、、ものですね、、」
「・・・」
「あなた、、、いままで、、ほんとうにありがとう」
「あなたのおかげで、わがやは、、あんしんして、へいわにたのしく、、すごせました、、」
「これからも、あのこたちを、よろしくおねがいします、、」
「、、、こんな俺が、、、息子達を幸せに、、できるか、、、、花水木がいないと、、おれは、、」
「、、あなた、」
「□□□□□□□□□□□□□□□」
「花水木、、、!」
「あなた、、、、、かおをよく、、みせて、、」
「まったく、、、ぐしゃぐしゃの、、かおですよ、、」
「、、、花水木も、、目が、、、水まみれだぞ、」
「ふふっ、、、おそろい、、ですね、、」
「、、、あなた、」
「、、、なんですか?はづきさん」
「永遠に、、、愛しています」
「、、、俺もですよ、、、はずきさん、、、」
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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「そうして花水木は息を引き取った、、、」
『・・・』
「花水木は、お前たちを愛していた、そして同じように俺もお前たちを愛している、」
『、、、そんなことがあったんだ、、ごめんなさい、、乱暴な言葉を使って、、』
「いいさ、怒るのも無理はない、」
『お母さん、、、、』
「だから、俺はお前たちを何があっても守るようにした、、、、これ以上悲しい思いをしないように、、、」
「だから教えてくれ、なにがあったかお父さんに」
『、、、、うん、変な意地張ってごめんなさい』
「もうこれ以上謝るな、謝ったらデコピンだぞぉ」
『分かったって!笑』
「ハッハッハッ」
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「そうかぁ、そういう事かぁ、、、」
『葵には、悪いことしたよ、、、』
「でも、檸音は自分がそもそもの原因って分かってるんだろ?じゃあその気持ちを伝えるだけだな」
『伝えるって、、、葵納得してくれるかな、、』
「大丈夫さ、葵くんは理解力が高い子だからな」
「これを機会に檸音の今の状態を伝えるいい機会でもあるしな」
『そうだね、、、、ありがとう父さん、明日葵に謝るよ、そして俺のこと全て話すよ』
「おう、お前は俺の息子だ、絶対大丈夫だ」
『うん!父さんありがとう』
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「こんなおれが、、、、息子達を、、、幸せに、、、できるか、、、花水木がいないと、、、おれは、、」
「、、、、あなた、、」
「あの子たちの親として、、父親として、誇りを持ってください、あなたは、、、この世で1番の、、最高の父親ですよ」
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パンッ
「花水木、、、、俺は、檸音達にとって誇りに思える父親になれてるか?」
「、、、空から、、、俺たちのことを、見守っててくれよな、、、、、愛してるぞ、花水木」
8話目いかがでしたか?
檸音のお母さんのことが詳しく分かりましたね、きっとこの2人、花水木さんと椿さんは檸音達にとって最高の両親でしょうね。
さて、2人は次の日無事仲直り出来るのでしょうか