1滴目「放課後」
夏が始まる6月後半、高校2年生であり恋人の葵と檸音は放課後の約束をしています。
耳に響くチャイム、不揃いの蝉の声、黒鉛がノートをつつく音、、、僕は夏が嫌いという訳では無い、ただ合わないだけだ。まだ6月の後半なのに、この暑さは僕の元気を溶かしていく。
あー、なんかだるいなぁ
『オーイ!あーおいー!!』
あー、アイス食べたいなぁ
『オーイ!!葵!!こっち向けー!』
なんで皆こんなに元気なんだろなぁ、、、
「うわぅっ!?冷た!!」
『葵〜、俺ずっと廊下から呼んでたんだぞ?』
「え、ごめん気づかなかった。てか、気づかなかったからって水筒の氷を服の中入れるのは違うだろ!!」
『気づかないのが悪いんぞー』
暑苦しい、この夏の日差しに負けない声量、笑顔、、、まぁそこが好きなんだけど、、、
『なぁなぁ放課後駅前のスターパックス行こーぜ!最近スイカ味が出たんだって』
「へぇー、スイカ味の飲み物ってあんまし飲んだことないかも!」
「じゃあ決まりな!終礼終わったら下駄箱で待ってて!!」
そう言い残した檸音は隣のクラスに駆け足で帰っていった。走ると同時に周りに風が舞う。
ラムネの匂い、、、
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『お、キタキタ。こっちこっち!!』
「待たせてごめんね、担任の話が長引いて」
『そんなに待ってないから気にすんな!!それより暑いから早く行こうぜ』
「うん、あごめん、僕今日自転車通学じゃないんだ。だから先に行ってて」
『あー、じゃあ俺の自転車乗れよ。ニケツしよーぜ』
「えーだめだよー、先生に見つかったら怒られるよ?それでこの前反省文3枚書いてたじゃん」
『うっ、、ま、まぁ、次はバレないようにするからさ!!ほら早く乗って乗って!!』
「はぁ、俺は見つかったらすぐに降りて逃げるからねー」
そう言いながら僕は檸音の自転車の荷台にまたがり、落ちないように檸音に抱きついた。
太陽光に晒されていたからか、おしりの熱が上がっていく。でも、今はそれよりもお腹が熱い。檸音の少し汗ばんだ背中の体温が直接お腹に伝わってくる、それに加え違う暑さも体の内側から上がってくる。
蝉の声、行き交う車の音、それに負けない鼓動の音、、、
2人乗りも意外と悪くないな、、、
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『なんか、、、ビミョーな味だな。見た目もショボイし味も薄いし』
「まぁまぁ笑、冒険したって思えば新しい発見ってことにできるよ」
『スイカ味の飲み物はビミョーって発見ね、、、クラスのヤツらに教えてやろ』
眉間にしわを寄せながら檸音はストローを吸った
檸音は昔から味が濃いめの食べ物が好きだから、これが口に合わないのも分からなくもない。
「これ飲んだら帰ろっか、そろそろいい時間だし」
『んあ?まだ周り明るいぞ?少し駅周辺でも歩こうぜ』
「時計見てみなー、もう7時前だよ」
『はぁ!?もうそんな時間なの?にしても明るすぎだろ』
檸音は集中したり楽しかったりするとよく時間を忘れたりする。楽しかったりしたら、ね、、、
『ん、何ニヤニヤしてんの?もしかしてヤラシイ事でも考えてたんかー?笑』
「考えてないよ!!デリカシーないんだから!」
『ごめんって笑ほら、もう飲み終わったしそろそろ帰ろうぜ』
そう言って檸音は少し外れた所に置いていた自転車に乗って戻ってきた
『家まで送っていくから後ろ乗れよ』
「え、いいの?檸音の家僕の家から離れてない?」
『、、大切な人を1人で帰らせるやつがいるかよ、、、』
突然目を逸らした顔はお互いに夕日色に染まっていた
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「ありがとねここまで送ってくれて、暗くなってきてるから気をつけて帰ってね」
『おう!』
「じゃあまた月曜にね」
『、、、な、なぁ!』
「ん?どうしたの?」
『あ、明日ってさ、その、空いてたりする、か?』
声が詰まっている、こんな檸音を見たのは初めてだ。
デートの約束をする時でさえも元気にスラスラと話すのに、、、
「と、特に予定は無いけど、どうしたの?」
『あのさ、その、えっと、、だ、だい』
「だい?」
手が震えている、呼吸も早くなってきている
『大事な、、話があるので、、俺の家来て欲しい、、です、』
気のせいかもしれないが、一瞬だけ檸音からラムネの匂いが薄くなった気がする
「、、、わかった。また時間はLINEで教えて」
『ありがとう、、、じゃあまた明日ね、、、』
いつもの檸音じゃない、何故だか知らないが、不安で仕方がない。
そして何故か、帰っていく檸音の後ろ姿が見えなくなるまで目が離せなかった。
最後まで読んで下さりありがとうございます!!
初めまして、作者の夏花と申します!!
「あの花火をもう一度」記念すべき1話目となります、楽しんで頂けましたか?小説を書くのは初めてなので多少不備があったり読みずらいとこがあるかと思います。もしよろしければ、作品の感想や改善点などを教えていただけると幸いです。
いや〜それにしても葵と檸音の行方、気になりますねぇ。明日、一体檸音から何を話されるのか、2人の夏の運命が大きく変わる気がします。
ぜひ次回のお話も楽しみに待っていてください!!