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女性の家で出されたお茶は飲んだのに、喉が渇いていた。
側に有る自動販売機で飲み物を買った後、お墓の近くに有る公園の時計で、昼を回っている事に気づいて、公園のベンチに座る事にした。
自分の右隣に置いたカバンを開けて、母が用意してくれたお弁当を膝の上に置いた。
食欲は無かったけれど、せっかく作ってくれた物を残したくない。
お弁当の端には、刻んだネギの入った卵焼きが二切れ有った。おれの好きな料理を覚えて、作ってくれる事が申し訳ないくらい、有りがたかった。
「母さんは、もう、お昼食べただろうな」
家に居る母は、きっと心配して居るだろうから、食事をとったら、自宅に帰ろうと思った。
ペットボトルのフタを開け、中身を少しだけ飲む。
右隣の開いているスペースに飲み物のボトルを置いた後、おにぎりに箸を付け、口へ運んだ瞬間、母が泣いている光景が見えた。