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女性から聞いた場所に行き、咲屋満月のお骨が収められた墓石に手を触れる。
見えて来た光景は、咲屋満月が息を引き取る時の物だった。
周囲に誰も居ない自室の布団で休んでいる咲屋満月が「ごめんなさい」と、かすれた声で呟く。
母も父も、生活の為に仕事へ行っているのだという事が、彼女の記憶から分かった。
この日が最期になると思わなかった咲屋満月の両親は、人が居ると眠れない彼女が眠れるよう、普段通り一人にしていたらしい。
咲屋満月の弟である吉平さんが息を引き取った時は、近所の人が吉平さんの様子を見に来てくれていたようだ。
天井を見たままの咲屋満月が、口を開く。
「人を殺した私は許されない。でも、もし来世が有るなら、今度は、あの子を生かし、守る人でありたい」
目を閉じた咲屋満月の視界は暗く、何も見えなかったけれど、頬を涙が伝うのを感じた。
「私が殺されれば良かった」
咲屋満月のその声を最後に、記憶は見えなくなった。