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 起き上がる。

 母の隣で目を覚ました、おれの体は五歳くらいで、夢の中の「十五歳の自分」では無い。

 夢の中の自分は自分では無いはずなのに、悲しくて仕方なくて、涙が止まらなかった。

 この夢を見た時、自分は大抵、泣いている。

 三十年前まで、日本では「異端者狩り」と呼ばれる行為が当たり前だった。

 政府が、『異端者』を駆除した人間には多額の報奨金を出すと言い出した為、様々な事情から命を奪われた『異端者』が多く居たという。

 親族の中で唯一、金色の目を持つ自分は、この国では『異端者』だ。

 諸外国から、「異端者狩り」は非人道だと言われた日本の政府が、手のひらを返して「異端者狩り」は罪だとするまで、『異端者』を殺す事は罪だとされていなかった。

 三十年前に生まれていれば、おれも殺されていたかもしれない。

 母にしがみつく。夢は現実などではなく、今、生きている事が現実だと認識したかった。

「また、怖い夢、見たの? いつき

 母が、おれの髪を撫でながら、「大丈夫」と笑い掛けてくれる。

 窓際のカーテンの隙間から、光が差し込んで来ている事に気づいた母は、おれを抱き締めた。

「起きて、ご飯にしようか」

 母は唯一、おれが見る夢を「大した事無い」と言わずにいてくれる人だ。

 カーテンを開ける母を見ながら、布団から出た。

 顔を洗う為に向かった部屋で、洗面台に備え付けの鏡へ目をやると、自分の金色の目が、こちらを見て来る。

 思い出したのは、夢に出て来る自分が『異端者』として殺された事。

 相手は追い掛けて来て、おれは山中に逃げ込んだけれど、ナイフで刺されて命を失った。

 頭の中を鮮明によぎる記憶に、おれは叫んだ。

 誰かに殺されて、自分は今の母のもとに生まれ変わった。そうとしか、思えなかった。

 叫び声を聞いた母は、おれの居る部屋に来てくれた。

「どうしたの」

 母は「うるさい」などと怒る訳では無く、優しく尋ねた。

 おれは今、見た記憶を母に話した。

「樹は大変な思いをしたのね」

 真横に立ってくれた母は、「前世の記憶が有る」と言い出した、おれを否定しなかった。

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