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緑色の軽自動車を探す。
しばらくして、それらしき後ろ姿を見つけた。
側まで駆けて、ナンバーと車中を確認し、母の車だと確信する。
覗き込んでも、誰もおらず、辺りに母の姿は無かった。
けもの道に、人が歩いた跡が有る事に気づく。
前世のおれの遺体が有る場所へと、足跡は続いていた。
おれと変わらないサイズの靴跡を追い掛けながら、山中に入る。
誰かの役に立って、死にたかった事を思い出す。
生きていても、誰にも必要とされず役立たずと言われるなら、最後くらい、自分の人生に意味が有ると思いたかった。
『異端者』として殺されれば、必要な人がお金を手にする事が出来る。
それで誰かを追い詰めるなんて思わなかった。
母が今、苦しんでいるなら、ずっと苦しんでいたなら、身勝手なおれのせいだ。
まだ、伝えたい事を伝えていない。
前世のおれを殺してくれて、ありがとうと。