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作ったものを、お弁当箱に詰めながら、母は唇を動かす。
「樹には全部見える。前世の自分から、何が有ったかを知る。私の犯した罪からは逃げられない」
まだ窓から光の入らない時間。台所の電気だけで、母は、お弁当を作っている。
「どれだけ今、愛していても、前世のあの子を私が殺した事は変わらない。全て知って、樹が私を家族だと思ってくれるはず無い。寒い場所に、放っておいて、ごめんね」
涙を流す母が、壁に掛けられた車のカギを見つめる。
少しして、お弁当のフタが閉じられ、おれの視界は公園に居る自分のものに戻っていく。
お弁当を急いで食べ終えて、前世の自分が埋められた山へ走った。