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被害妄想では? 3





 しばらく彼女とともに平穏な学園生活を送ることが出来た。


 犬型の魔物であるジェラルドはたしかに抑止力になったし、ジゼルと離れるときには彼女についていてもらうことにした。


 しかしすぐに狙い通りに事件は起きた。


 それは学園外演習の迫った日の放課後の事で、魔術別クラスを終えた後にクラスで自習をしていたフィリスの元へと、ジゼルが涙を堪えながらやってきた。


「フィフィフィ、フィ、ふぃりす!!!」


 一瞬彼女が変な泣き声か笑い声をあげているのかと思ったが、例によって恐ろしくどもっているだけであった。


 そんな彼女の手には、血まみれになってぐったりとしているジェラルドの姿があった。


 いつものもふもふの毛皮は血にまみれてボリュームを失っていて、腹部には大きく抉られたような傷がある。


「っ、ふぃふぃっ、フィリス!!! ジェリーがっ、ジェリーがっ、死んじゃししっ、うわあぁん」


 ジゼルはその手を血に染めながらも、ジェラルドを必死に差し出してきて、自分でも水の魔法道具を使って彼を治療しようとする。


 ところでジェリーというのはジェラルドの愛称らしい、随分と可愛らしいし本人も気に入っている様子なのでそのままにしているが、どうにもフィリスから見たジェラルドの印象と合わない。


「ジゼル落ち着いて、大丈夫」

「だだだっ、大丈夫?! 大丈夫じゃあないよ!! これは死んじゃう傷だよ、よよよっよく見て」

「大丈夫、余力は残してる」


 そう口にしてフィリスは教室にまだ誰も戻ってきていない事を確認しつつ、ジェラルドの頭を優しく魔力を込めてなでる。


 あまり魔力を込めすぎると大きくなってしまうので注意が必要だ。


「起きて、ジェラルド。起きてきちんと役目を果たしたか教えて」


 魔力を込めてやるとキラキラと彼の瞳は輝いて魔力の光がともる。それはとても美しい光景で、見る見るうちに血も失った毛並みもあっという間に戻っていく。


『っ、ぷは~、久しぶりの神聖な魔力うめぇ~!』


 カパッと口を開けてどこからともなく人語を発する彼に、フィリスはやっぱりジェリーという感じではないなと思うが、それよりも重要なことがあるのだ。


 じっと見つめると彼は、目を見開いて、それから舌を出してへっへっへっ短く呼吸をしながら、無害そうな犬みたいな顔をしてフィリスに言った。


『そう渋い顔すんなって! ちゃんと俺に手を出したやつらに返り血を浴びせてやったぜ!』

「わかった。……それなら、契約通り━━━━」


 フィリスが彼の頭をもう一撫でしようと手を伸ばすと、信じられないものを見るような眼でこちらを見ていたジゼルが、瞳を輝かせておもむろにぎゅうっとジェラルドを抱きしめた。


「ジェリー!! 良かった!! 私を守って死んでしまったらどうしようってずっと思ってたの!!」

『おう? おう!』

「ああ、良かったものすごくふわふわっ、ありがとうジェリー!」


 彼はジゼルに抱きしめられてなんだか間抜けな犬みたいな顔をして、そのままジゼルの頬をぺろぺろと舐めた。


 そのまま魔力を供給するがジェラルドはジゼルの胸の中から動く気はないらしく、ジゼルがそのまま受け入れているならいいかとフィリスも適当にその場を放置した。


 なんせ人語を話すという特徴は、人をたくさん食らった魔獣に現れる特徴だ。


 それほど彼は危険で恐れられるべき存在だが、ジゼルが大切に思ってくれているのにわざわざ水を刺す必要はないだろう。


 それよりも計画のことだ。


 今日、たまたまフィリスの使い魔である彼は、誰かしらかの攻撃を受けた。


 そのせいで、聖女であるフィリスの魔力を纏っている獣の血を浴びた。


 魔力が豊富で神聖で、そこらじゅうの魔獣を殺して回っているフィリスの魔力の籠った血だ。


 体に付着したそれは、簡単には落ちない、そして数日後にある学園外演習。


「ジゼル、学園外演習は今回だけおやすみしてほしいの」

「え、えええと、どうして?」

「理由は言えない、ただ、あなたを危険にさらしたくないから……お願い」

「う、うう、うん。わかった、ふぃふぃ、フィリスの為だもん」


 笑みを浮かべて了承する彼女にフィリスはほっと息をついて、教師にジゼルが休む件についてとその演習の評価を根回ししておくのだった。






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