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被害妄想では? 2






「婚約者が私の為に連れてきてくれたんだ。仕事の合間を縫って……」

「へぇ、婚約者からの贈り物かぁ」

「いいですね。犬型の魔獣は小動物の簡単に使役できる子たちと違ってずっと強いし、他の動物に比べて人間に従順ですもん。でもその分とっても稀少……愛を感じますね」


 ……たしかに正規のルートで購入しようとすると相当難しいかもしれないけどジェラルドは、直接飼いならしたというか……。


 しかしそんなことを言っては、彼女たちはドン引きだろう。


 ここはとりあえずいい話で終わらせておいた方がいいに違いない。


「うん。……とても大切にしてくれていると思う」

「いいなぁ、私も小さい子でもいいから使い魔が欲しいよぉ」

「そうですね。今度の学園外演習で向かう王都の森には、小動物の魔獣がたくさんいるらしいですから、どうにか友好的な子を探しましょう」

「そうしよぉ」


 二人は仲良くそうして話をしながらも手だけでは、ジェラルドを丹念に撫でまわしていて、相変わらずジェラルドはクーンと鳴いていた。


 ……学園外演習……たしかに友好的な使い魔となる魔獣を探すのにうってつけ。魔法学園に入って基礎学習を終えてカリキュラム的にもそろそろ実戦に入る時期。


 これからの学園の授業ではどんどん実技の訓練が増えていくから、おのずと魔獣が発生する森へと行くことが多くなる。


 そのあたりがフィリスが策略を巡らせている部分であり鍵になる部分だ。


 そう考えてフィリスは、彼女たちに視線を向けた。


「それじゃあ私、そろそろやることがあるから」

「うん、ありがとぉ、触らせてくれて」

「凄くふわふわでした、感無量です」

「良かった。いつでもまた声かけてね……よし、行こう、ジェラルド」


 声をかけて席を立つ、そうすれば後ろから短い脚を動かしてジェラルドがもふもふとついてきた。


 向かう先はもちろん彼らのところだ。


「じゃあこれから賭けようぜ! ジゼルさんが俺らの名前どもらずに言えるかどうか!」

「何言ってんだお前、それじゃ賭けになんないだろ。だってずっとどもってんだから」

「そうよ~! これでも頑張ってるのよ~。それなのに馬鹿にして~。かわいそ~!」

「それにしてもありえんぐらいどもるよねー、もう普通に会話できなくねー?」


 一つの席に集まってきゃはきゃはと楽しそうにしている彼らのそばまで行って、フィリスは、だらしなく椅子に座っている彼らを見つめて口を開いた。


「……そんなに弱いものいじめが楽しい?」


 まったく意識外だったらしくフィリスがそう問いかけると彼らは一瞬にして黙って一斉にフィリスに視線を向けた。


 しかしとりあえず犬型の魔物であるジェラルドを持ち上げて視線をガードした。


「ジゼル、こちらにきて」


 真剣に見つめて声をかけると、彼女は慌てた様子で何度か何もない所でつまずきながらもフィリスの方へとやってきた。


「……はぁ? なにそれ、抑止力のつもり?」

「お兄さまに守ってもらって調子に乗ってんのかよ」


 周りの取り巻きたちは黙り込んでダイアナとブルースがフィリスに敵対的な視線を向けた。


 彼らは、自分たちのフィールドに戻ってきたからかフィリスに対して強気な姿勢だ。


 実はすでに彼らの領地からの救援要請について対応を他領とは差別することについては通達済みだ。


 そのうち事情聴取の為に実家に呼びもどされるだろうということは確定している。


 しかし、その間だけだとしても他人がいじめられているのを黙って見ているのはフィリスの性に合わないし、それに彼らに関して言えばフィリスが彼らのことを助長させたかもしれないとも思う。


 だからこそ野放しには出来なかった。


 けれども口で彼らに勝てるとも思えない。なので真っ向からは取り合わずに、ジェラルドをずいっと差し出した。


「っ、これは!」


 未だにあの時のことを思い出すと少し恐ろしい、しかし、それでも攻略方法はわかっているのだ、確実に無力化できる。


「これは、私を守る使い魔のジェラルド。誰がどう正しい事を言っても改心しないあなた達に相応の罰を与えるために連れてきた」

「は?」

「何言ってんの?」

「あなた達がいじめをしようとしてもジゼルについて回って守るし、誰にももう苦しい思いはさせない」

「守るって、バッカじゃないの? そんな弱そうな犬で?」

「いや、世間知らずな聖女様の精一杯の虚勢だろ! 俺に婚約破棄されて気を引きたいのか?」


 ふざける彼らに周りの取り巻きたちが茶化して、さらにその場は騒がしくなった。


 しかし、フィリスは真剣に続けていった。


「何もしなければ、悪いことは起こらない。でも、私でもジゼルでも虐めようとしたときの今後の保証はできない」

「脅しとか、痛すぎ」

「ていうか虐めてないだろ、俺らはただジゼルさんと仲良くしてただけだしな」


 そういってフィリスのそばにいたジゼルに視線を向ける。

 

 彼女はその言葉にびくっと反応してうつむいた。その姿に以前の自分の姿を重ねてフィリスは言うことは言ったので身を翻して、ジゼルの手を取った。


 すると彼女は大人しくついてくる。


 彼らの言葉を無視して自分の席へと戻るとジゼルはやっと顔をあげて、ジェラルドを見た。


 可愛らしい小型犬然としているジェラルドにジゼルは少し表情をほころばせてふんわりしている毛並みに触れた。


「せせっ、…………聖女フィリス様、たたたっ、助けていただき、アありがとうございます」

 

 少し落ち着いた様子で言う彼女は、相変わらずとてもおどおどとしていて、自信がない様子だった。


 しかし、気にしないでほしい。助けたのはただの自己満足だ。


 それにフィリスとジゼルはこの場所では同学年の同じクラスだ。そんな風にかしこまられる存在ではない。


「ううん。私はただ、自己満足の為に助けただけだから、それよりも急に声をかけて驚かせてごめんなさい。それに付け加えて、しばらくジェラルドと私と過ごしてもらってもいいかな……」

「え、え? はい、はい!いい、いいですけど、だって、私、おおお友達いないしっ」


 フィリスが言うとジゼルはとても驚いた様子でコクコクとうなずいて、戸惑っている様子だったが了承してくれる。


 それに安心しつつも、ジゼルの言葉にフィリスも思わず笑みを浮かべて同意した。


「わ、私も、友達いないかから……お揃いかも」

「え、あ、ううう、うんっ、お揃い」


 フィリスの言葉に彼女はすぐに同意した。その顔に浮かんでいる笑みはとても素朴で愛嬌のあるものだった。




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