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自業自得



 話をしていると、ドミニクとレアもやってきて彼女たちとも久しぶりの再会を喜び合った。


 それからしばらくしてある程度、生徒が登校し終わりそろってくるとふとレアが思いだしたかのように言ったのだった。


「そういえば、聞きましたか? ダイアナの話……」

「あぁ、それねぇ、でも自業自得だよぉ」


 レアの口からダイアナという言葉を聞いてフィリスはすこしだけ心がざわついた。


 あれ以来話もしていないし、何事もないのだが、情報の早い彼女たちから色々な話を聞くことが多い。ダイアナの事もレアからたまに情報を得ていた。


 しかし長期休暇の間はまったく学園の友達と接点がなかったので、情報が得られていなかった。特別どうなったか知りたいという気持ちはないけれど気にならないわけではない。


「私はまだ知らないんだけど……どんな話?」


 複雑な思いのまま聞くとレアは少し声を抑えて、フィリスにこっそりと言った。


 神妙な顔はしていたが、彼女は手元ではジェラルドの腹をこれでもかと撫でまわしている。


 相変わらずブレない。


 そしてなぜかフィリスの隣でジゼルは自慢げだった。きっとジェラルドを可愛い可愛いと言われて愛でられて嬉しいのだろう。


「……あのですね。ダイアナは学園を退学になってから、酷く自分の家族に当たっていたそうなんです」

「うんうん、プライド高そうだもんねぇ、べアール先生に怒られたのがよっぽど響いてたっぽいよぉ」

「そうなんです。それでお父さまにもお母さまにも文句を言ってばかりで悪態をついていたらしいんです。それに魔法を使って、魔術を持っていない家族たちを怒りに任せて傷つけたりもしたそうです……」

「それでぇ、これじゃあ、危険だって事になったんだよねぇ」

「ええ、そうです。……そういうわけで禁じられた森の近くにある精神病院に入院になったんですって」


 驚くことに以前、聞いた話からどんどんと進んで彼女は行くところまで行ってしまったようだ。


 普通は少し心のバランスを崩した程度では、家族はそんな場所へ自分の子供を入れたりしない。だって病院とは名ばかりの隔離施設である。


 せめて一度教会に入れて考える機会を与えるなり、家族の中だけで話し合って貴族として暮らさせることは出来なくても、平民として自分の領地で匿うなりあっただろうと思ってしまう。


 なんの機会も与えられずお金さえ払えば厄介払いできる場所へと送られるとは、それほどの事を彼女がし続けたか、もしくは、彼女の両親すら、彼女と同じで他人を貶めるのにまったく抵抗がなかったかのどちらかだろう。


 一言聞いただけでは、酷い気もするが、ドミニクの言った通りに自業自得とも思える。


「ご両親も思い切ったことをしますよね。貴族だろうとあんな場所に入れられてはもう二度と……」

「戻ってこられないしぃ、おかしくなっちゃうよねぇ」

「でも彼女の事は可哀想とは思えませんよね、複雑な気持ちです」

「私たちは、そんな風になんないよぉに生きようねって話でいいんじゃないのぉ」

「はい、たしかにそうですねドミニク」


 彼女たちは最終的にはそれを教訓にしてまっとうに生きようねという話で終えた。


 けれども、もうダイアナはフィリスのいる場所のどこにも姿を現さず、これから先も見ることもなくて思いだしもしなくなるのだと思うと不思議な心地だった。


 それに、クラスの中を見回してみると、ブルースも来ていない様子で、いつもそばにいたチャーリーが落ち着かない様子で彼が来るのを待ちながら扉を見ていた。


 ブルースの方がどんな風になっているのかフィリスは知らない、しかし彼もまたただでは済んでいないだろう。


 また学園に来るかどうかはわからない、それは本人次第だ。


「それよりも、今年最後のイベントになる進級試験がいよいよやってきますね」

「し、進級試験!」

「そうだよぉ、がんばらないとぉ」

 

 三人は新しい話題を始めて、フィリスはブルースの席から目を逸らして彼女たちの楽しそうな話題に加わった。

 

 今はもう、フィリスには自分の歩む道がある。過去の事をわざわざ振り返ってつらくなるほど暇ではないのだ。





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