2
蓮華と出会ったのは肌寒い11月のこと。
私は仕事終わりに公園で酒を流し込んでいた。
ぼーっと辺りを見ていると草原から髪が生えているのを見つけた。
まだ飲み始めたばっかなのにもう酔っ払った?おかしいな。そう思って髪に近付いてみる。
暗くてよく見えない。
スマホのライトをつけて、周りを照らす。
そこには女性が倒れていた。
「ちょっと、大丈夫ですか?聞こえますか?」
首に手を当てると脈が確認できた。
よかった、生きている。
「んぅ…」
「あ、大丈夫ですか?怪我ありませんか?」
「あなた誰?ここどこ?私何してるの…」
長いまつげに綺麗な瞳。
こんなに美しい人居るのか、そう思った。
「とりあえず、私の家来ます?寒いですし。」
「そうね、そうしてもらうわ。」
家に着くまでの間、ほぼ無言だった。
蓮華が何かを言っていたような気がするが。
「あなたって案外小さいのね。」
「はあ?!」
私の身長は150cm。
蓮華の身長は162cm。
小さくて悪かったな。
そう思った。
家に着き、ボロボロの蓮華をとりあえず風呂に入れた。
「あったかーい、気持ちいい。」
「そ?よかった。バスタオルと着替え置いとくね。」
「ありがとうございます。」
きっと育ちがいいのだろう。
靴を揃えてあるし、脱いだ服はちゃんと畳まれている。
偉すぎる。
私なんて靴も服も脱ぎ捨ててあるのに。
「お風呂ありがとうございました。」
「うどん作ったけど食べる?」
「ではいただきます。」
濡れた髪を縛り、彼女はうどんを食べ進める。
綺麗な横顔だ。
「ごちそうさまでした。」
「早っ」
「美味しかったです。」
「そりゃよかった。髪乾かして来な、ドライヤーあるから。」
「はい。」
暫く経つと、サラサラの髪が目の前に現れた。
「サラサラだねー、綺麗だよ。」
「褒められるのは初めてです。」
「まじ?こんな綺麗なのに。」
「てか名前言ってなかったね。私、霧咲えりな。あんたは?」
「…名前、要らない。」
「そっかぁ。じゃあ私がつけてもいい?」
「はい、」
「じゃあ蓮華ね。」
「れんげ?」
「うん。蓮華。」
少し嬉しそうに笑みを浮かべる蓮華。
かわいいな。
「蓮華はさ、なんであんな場所に倒れてたの?」
「私、捨てられたんです。」
蓮華はお姫様だった。
正確には社長令嬢。
私には想像できないくらいに過酷で恵まれた環境で育った。
でも、最近会社が倒産して家の者は全員追い出されたらしい。
それであんな場所に倒れていたんだ。
「そっか。でもこれからは!私と暮らせるよ?」
「え?」
「あなたの知らない世界教えてあげる。大丈夫、部屋は余ってるしちゃんと愛すから。」
「…はい。」
こうして私と元お姫様の暮らしは始まった。