表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2章日本帰国と彼女の変化

反対闘争の地、成田空港に共産主義国から降り立つ。それもとんでもない手土産を持って。いや、人間を土産物扱いはよくないか。


「普通に空港から洋服なんだね。」

「今は2024年ですから。漢族以外も普段は普通に洋服を着ていますよ。」

「へー。」


若くてあまり私服で外出しない娘の私服といったら部活着やいわゆるクラスTシャツの延長のようなものではないかと勝手に思っていたのだが彼女、李さんの私服はどちらかというとネオハラ系だった。以外すぎる。もしやそういった方向に素質があるのか?


そんなことを考えながら成田空港駅を闊歩していると中国人らしき家族が何やら困った表情で立ち尽くしていた。その家族の男の子がつたない中国語で会話する私をみると中国語がわかる日本人だと思ったのか助けてほしいと話しかけてきた。


「僕、どうしたの?私は漢族ではないけど中国人で彼は日本人だから彼ならわかるかもよ。」


李さんは子供の目線まで膝を落として語りかけた。自分だったら結構無視して逃げるけど彼女は違うようだ。とりあえず子供に連れられて親の元へ向かった。


「いや、悪いね。君は中国語が話せるのかい?渋谷のスクランブル交差点に行ってみたいんだけど駅員は拙い英語でJRでもKEISEでもどっちでも行けるって言うんだ。スマホも見たけどどちらを使うのが良い選択肢なのかわからなくてね。」


自分も結構悩む選択だったが日暮里という概念を説明するのが面倒だったので会社の数が減ると言ってJRの成田エクスプレスを推しておいた。


日本を出発する前の私なら考えられないほどサービスした。これは李さんの影響なのだろうか。


問題を解決して東京の多摩へ向かおうとしていると自撮り棒で動画を撮るコーカソイドが居た。


「ああいう観光客は私の地元でも見ましたが撮った動画や写真をどうするのですか?」

「まあYouTubeとかにあげるんじゃない?まあ金盾でブロックされてるから百度とかweiboとかビリビリなのかなそっちは。」

「へえー。私もビデオブログをはじめたら友達や恋人ができますか?」

「えっ恋人作るの?」

「だって私、あなたとしたけど何も言ってもらってないです。」

「ごめん。好きだよ君のことが。」

「ありがとうございます。ではこれからもよろしくお願いします。」


なんでこんな流暢にこんな言葉がでてきたのかはわからないがどうやら「私」は人間性を取り戻しているようだ。しかし、彼女はというと環境を変えるために「私」を活用したのかなという態度だ。そしてなぜ、私の心は悲しいのだろう。


「あの、私も行ってみたいです。さっきの、スクランブル交差点ってやつ。」

「いいよ。どうせ帰る途中だし。」


代書屋や職員達へのちょっとしたお土産、もう1人分の旅券でいくら親から送金してもらったとはいえ金に余裕が無いのでさっきの親子とは違って成田線、総武線、山手線を乗り継いで渋谷に向かった。


「渋谷は昔行った上海とは違う香りの街ですね。変わったファッションの人が多いですが私はあの人の出たちが好きです。」

彼女が指差したのはハイパーポップやフューチャーベースを好みそうな見た目の水色髪の女の子だった。新宿の地雷系じゃなくて良かった。


「そうだ。友達もこちらにはいないだろうしTwitterでもはじめなよ。Instagramもいいだろうけど君結構オタク気質だしTwitterが合うよ多分。これ僕のアカウント。」


こうして三多摩の家賃8万円の部屋で同棲が始まった。女の人に家事をやらせるつもりはないのだが彼女は美味しい料理をたくさん作ってくれた。暗いトンネルが永遠に続く自分の人生に光が差した。のかもしれない。


元同級生の田所は後日久しぶりに我が家を来訪すると状況はなんとか飲み込めたのだが何故か機嫌がすこぶる悪かった。そして李さんも機嫌が段々と悪くなりなんとなって解散した。


ある日李さんは真剣な話があると言った。

「とりあえずバイトしながら語学学校のお金を貯めて卒業したら本格的に働きたいのですが、Twitterで仲良くなった同じ国の人達からValorantというゲームをしないかと誘われています。あなたのPCと配信機材を借りても良いですか?」

「良いけど配信機材とかネトゲのこと結構詳しいんだね。」

「母国でもLOL(リーグオブレジェンド)はやってましたよ。流行っていたので。」

「あ、そうなんだ。」


暇な間どうするんだろうと心配していたのだが思わぬ速度で中国人コミュニティからバイトや友達を手に入れ適応していた。


そうか、彼女の言う地元から逃げたいというのは現代の日本の原宿系コスプレイヤーが東京に出たいというのと同じようなノリなのだな。と安直なことを考え、自分の中の農村ですれ違った純朴な美人というイメージが少しずつ崩れていった。


そのうち彼女は日本人のゲーム仲間もでき日本語もメキメキ上達していった。髪色も前から染めたいといっていたピンク色になりバイト代で自分用の配信機材やド派手な洋服を買ってtwitchでのゲーム配信をはじめたようだ。最初は地味でゲームしながら料理や中国文化の話をしていたようだが最近は見た目も露出が激しくなり、トーク内容も女vtuberのような過激さである。


このような活動がバイト以上にお金が稼げることに気づくと中国から持ってきたイ族の衣装を着てYouTubeで動画投稿も開始した。旦那として動画に出演して欲しいと言われ、彼女のためならと出たのだが完成した動画を見ると自分の顔が引きつっている。


「私」が違和感を感じて血便が出たのもこの頃だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ