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魔導兵物語(仮)  作者: zero
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王国と冒険者協会

数十台の資材等の運搬用竜車と人間運搬用竜車が王都に向かう。師匠と僕が乗る竜車には、他に冒険者協会のお偉いさんや処理班の方等が乗っている。

4頭引き竜車の中はかなり広く、20人は乗っていて、師匠とお偉いさんがずーっと話し合いをしている。

そのお偉いさんから、僕は子供で冒険者でも無いので、会話には参加させて貰えない。

お偉いさんは、今回の任務完了の現場立会人を務める人の長で、協会でも幾つもある部署の内、監査の長らしく、元々が冒険者出身者では無く融通が利かない堅物だと、僕の話し相手をしてくれている解体処理班のお姉さんが教えてくれた。

竜鳥であれば、20人程度が乗っている竜車なら、1頭でも十分に動かせるそうだが、長距離移動する為に4頭引きにしているそうだ。

因みに、チーム天馬も竜車を所持しており、僕たちも監視塔まで乗せて貰っていた。

竜車自体が目茶苦茶高価であるが、竜鳥1頭よりは安い。

「竜鳥をこんなに沢山所有してるなんて、協会ってお金持ちなんですね」

僕が、処理班のお姉さん、マリカさんに聞いてみる。

「そうでしょう?伊達に王都の冒険者協会【本部】を名乗りはしないわ!」

清楚な見た目に反して、魔獣の解体処理で肉切り包丁やら骨切り包丁を振るっていたマリカさんは、握り拳を作って王都冒険者協会について熱く語る。

「少年!知ってるかい?そもそも、王都の冒険者協会ってのは………」

マリカさんの

語る内容は、冒険者協会の設立から、現在に至る過程ですの紆余曲折である。

初代モンプチ王から2代ジャラーシ王、3代カールカン王までは王都周辺の開発維持等に尽力し、4代ミケーネ王の時代に他国との有効条約締結等によって、安全確保を図り、5代シャーム王の時代に、国力の向上安定、人口増加対策から、開拓の必要に迫られ、王国兵を使い、領土拡大に乗り出すも、調査の段階で失敗。

理由は、魔獣の数であった。

魔獣と戦うには、王国兵の数が足りず、かつ増やすにしても、真っ当な戦力に数えられる兵士が足りない。

結果、徴兵期間を終了した者達の中でも、戦闘能力が高く、集団行動の苦手な忠誠心の低いを集めて、調査隊を組織的に作り上げたのが、冒険者協会の始まりである。

個々人の能力が高い為、調査は一応順調に進み、調査隊も活動していく中で、連携の必要性を感じて成長し、いわゆる給料の高さから、やる気を引き出していった。

そして、年代が進み、徐々に組織として独立していったのだそうだ。

他国にも支部が多数あるのだが、元々が協調性の無い連中が作った組織であり、支部を作る度に本部だの元祖だの始祖だのを名乗ったそうで、暫くは面倒くさいやり取りがあったのだそう。

マリカさんがひたすら熱く語る中、休息場所に到着した為に、テントや食事の準備等に入った。

師匠と僕は、冒険者では無いので、見張り番が回ってくることはない。

ずーっと竜車の中だったので、体の調子が悪い気がしたので、師匠にお願いして稽古を付けてもらい、程よく疲れたので、2人して眠った。


翌朝、テントの片付けや朝食の準備、竜鳥の餌やり等を手分けして行い、出発した。

竜車では、酔ってしまうので問題集と睨めっこしなくても良いのだが、マリカさんの熱弁にひたすら付き合うのも大変だ。

師匠は御者台に乗り、馭者に竜鳥と竜車の扱い方を学んでいる様だ。

監査の長は、書類と睨めっこしているが、酔わないのだろうか?部下の方達も書類作成やら何やらをしているし、僕とマリカさんだけが浮いている気がする。


今日のマリカさんの話しは、魔獣の解体作業から、処理班が作られる様になった経緯、魔獣の食肉加工技術やらと、結構濃い内容だ。

魔獣肉に関しては、歴史上モンプチ王の時代には、食されているので、それ以前からは食べられていたのだろう。

魔獣の解体作業についても、モンプチ王以前から当然行われていたが、より良い処理方法、食肉加工技術が確立したのは、モンプチ王の末期らしい。

この内容を朝から晩まで語るマリカさんの思いの熱量は、何なんだろうか?

この日も休息場所に到着後、手分けして準備を行い、食事後、それぞれのテントに入るのだが、今日も師匠に稽古をして貰っていたのだが、結構な人達が酒を片手に見学をしていた。

昨日今日と、どちらかというと体を動かすのが目的なので、武器を使った稽古のみである。

僕自身、魔法をメインとした戦い方ばかりなので、武器のみでの戦いというのは、師匠との稽古以外殆どないのだ。

僕自身は全力で打ち込むが、師匠は軽く受け流したり、弾き返したり躱したりと余裕である。

あくまでも稽古だし、師匠との力量差は分かってもいるが、悔しくもある。

師匠には、悔しさが無いようなら、無駄な行為だと言われた事もあるし、ただ打ち込むだけなら、木にでも打ち込んどけとも言われた。

人に対して打ち込む以上、しっかりと考える事、相手の動きを見る事、相手の防御をどう崩すか、如何したら一撃を当てられるか、やる事、考える事はいっぱいあるぞとは、よく言われているし、現在進行形で言われている。

「自分自身に足りないものは理解しているか?」

そう師匠に言われると、逆に足りてるものを知りたいと思ってしまうが、顔に出ていたのだろうか?師匠が僕の剣と合わせながら、少し笑った様に言う。

「その通りだな。今、何かしら足りていると考えるならば、そこで終わりだ。多少は分かっているな」

褒めてくれているわけでもないのだろうが、ちょっとは、認めてくれているのかな。

「当たり前です。そもそも師匠に勝てる想像すら出来ません。でも、1番直ぐ側で見ているんですよ!」

言いながら、左右に動き近づいた瞬間、師匠の視界から消える様にしゃがみ、一気に下から切り上げるが、

頭を叩かれる。

「まだまだ工夫が必要だな?お前の師匠はそれだけでどうにか出来るかね?」

師匠が眼を細めて意地悪そうに言う。

僕は、頭を擦りながら師匠を見ながら言葉を返す。

「逆に、若しかしたらと考えました」

「短絡的過ぎるな?お前はまだ、体が小さく身軽さがある。小手先の技も悪くはないが、もっと相手の戦闘能力を奪うことも、念頭に置く様にな?」

「はい!師匠」

勢いよく返事をする。

「よし、今日はもう休め」

その声を聞いていた見物人も解散した。


2人でテントに戻り、服を脱ぎ、汗を拭い着替える。

寝袋に入り、師匠の様子を見ると、視線に気付いたのか師匠がこちらを見返してきた。

「どうした?眠れないのか?」

「いえ、何となく師匠が気になって」

「変なことを言うな?」

「師匠は、今までも、剣聖として冒険者協会から仕事を受けられましたよね?何故、今回は冒険者の登録をしようと思われたのですか?」

聞こうと思い、何となく師匠に聞けなかった事を聞いた。

「ああ、その事か。大した話しではないよ。私個人なら、お前の言う通り剣聖の肩書きで大半はどうとでもなるが、今後の…お前自身のために必要だからだ。」

「僕の今後?ですか?」

「私と一生一緒という訳にもいくまいし、何かがあって、逸れる可能性もある。いざという時の身分証明書にも成る」

「師匠と離れる……」

思わず言葉に出ていたが、考えた事がなかった訳でもない。

いや、義母さんと唯一呼んだあの人が倒れ、師匠に拾われたあの日から、師匠に連れられて彼方此方旅をしている時も、頭の片隅にいつもある考えだ。

「どうした?何故泣く。別に今すぐとか、近い内にお前と別れると言っているんじゃないぞ?」

どうやら、涙ぐんでいたようで、師匠がちょっと慌てている。

「ごめんなさい。色々と考えちゃって……」

涙を拭きながら答える。

師匠が優しく頭を撫でてくれる。


そのまま師匠と昔話をしながら、眠り込んでしまった。

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