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魔導兵物語(仮)  作者: zero
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魔獣強襲と悪魔の来襲

かなり急いで階段を下りてはいる。チラッと下を見ると、火の球が何度か動いていた。間違いなく、魔法の火球だろう。僕達は悪魔が近づくよりも先に下に到着し、皆と合流している筈だったが、実際は既に防護柵内での戦闘が始まっている有様だった。

連絡した時は異常すら無かった筈で、下りてくるわずかな間に強襲され、戦闘になったのだろうか。

ここから神の目で視ると、魔獣の数が多すぎ、アレンさん達前衛が魔法使い組を護りながら闘っているが、魔獣の包囲網が厚すぎる。

防護柵内に数十匹、その中には大型魔獣は居なさそうだが、瞬発力、跳躍力の高い中型魔獣が多く視える。

柵外には大型から小型まで、数百は居そうだ。

圧倒的な数の差に、正直恐怖を感じる。

「悪魔はまだ来てないのに!魔獣が多すぎますよ師匠!」

「魔獣を先にけしかけてきたのだろう。悪魔は魔獣の上位者にして絶対的な支配力を有しているからな。しかし、防護柵を突破する程の戦力を先行させてくるなど、こちらの情報をかなり持っている様だな。あのままでは持ち堪えられまい。私は先に行く。お前は無理するなよ?」

言いながら師匠は、天馬の方へ階段を飛び降り、着地と同時にアレンさん達を囲んでいた魔獣数匹を斬り捨て、更に数匹の魔獣を倒したが、斬撃を放ったことしか分からない。そのまま更に周囲の魔獣を倒しているのだろう、魔獣が血を吹き出し、どんどん倒されていくのが分かる。僕も急いで階段を下りるが師匠の強さは圧倒的で、天馬の周囲の魔獣が全滅した。師匠の圧倒的な強さを見てアレンさん達前衛も持ち直したようだ。

流石は師匠!と思いながら、僕自身も勇気を得て、一気に飛ぶ事にした。身体に風の魔力を込めて飛ぶ。

「風よ!」

力ある言葉を放ち、魔獣たちの真上に飛んで行く。

神の目が教えるその魔獣は、後衛で少し離れた場所になり、魔法の詠唱で集中しているトルネオさんを狙っていた。自身が狙われるとは思わなかったのだろう、全く無防備な状態だ。

風魔法を解き、落下しながらショートソードを抜き放ち、火魔法を付与し魔獣を真上から落下速度を加え叩き切る。通常、僕の腕力と身長では、大型魔獣を叩き切るなんて真似は出来ないが、高所からの落下速度を生かす事と火魔法を使う事で何とか斬る。

「うぐぁっ!」

魔獣を斬るも、落下の衝撃をまともに手足に受けて声が出る。その勢いを殺す為に前転し、起き上がりながら中型魔獣相手に横に斬り払う。

トルネオさんは詠唱を終えて魔法を発動させた。

「神の園」

小屋廻りの雰囲気が変わる。何だか、力が湧いてくる様な、体の痛みが減るような幹事だ。

神の目で視ると、魔法の範囲内が聖域化しているようだ。流石はリィズさん曰く天才トルネオさん。

「トモ君、ナイスフォローだよ!」

リィズさんにお褒めの声を掛けられ、もの凄い照れと嬉しさとやる事が出た。振り向き、リィズさんを見て軽く頭を下げ、魔獣を倒しに向かう。我ながら、単純だとは思う。好意を抱くお姉さんに格好つけたいとか、一目見て俄然張り切るとか、本当に単純だ。でも、戦える。

『汝、単純なれども、その意気や好し!』

神の目にも言われてしまう。そうだ、神の目が見てるし、思考もバレバレだ。

『あ~、すまんの。誰にも言わんよ?男子の決意を茶化したいワケではないんじゃ』

神の目とやり取りしている間にも、魔獣をたおしていく。


「魔獣の動きが鈍った今の内に減らすぞ!リィズ、タモンは攻撃魔法!ニール、トルネオは

補助。カイラス、ラインは維持しつつ撃破。ロンドは臨機応変にな!いつも通りだ!」

アレンさんが指示を出し、士気を高める。

小屋を背に陣形を維持しているが、広範囲を警戒し続けるのは厳しい。魔獣の死骸を積み重ねて壁代わりに使う。これで多少は攻撃も防御も範囲を狭められる。


「トモキウス、来い!」

師匠に呼ばれ、魔獣を倒しながらゆっくりと近づく。

「このバカ弟子め!手足を自分で痛める戦い方なぞ教えてないぞ。が、よくやった。それで、身体はどうだ?」

やっぱり叱られたが、褒められた一言は嬉しい。痺れと痛みは取れてきている。

「へへへ、一応、大丈夫みたいです」

手足をフリフリ、嬉しさから笑顔で答える。

「そうか。何よりだな。まだまだいけるか?」

師匠が少し心配そうに言う。

「任せて下さい!」

やる気十分な声で返事をする。しかし、完全な闇夜では無いが月明かりのみでは視界が心許ない。

「でも師匠、明かりが欲しいですね」

師匠に何となく言ってみる。

「間もなく来る悪魔からすれば、それは良い的に成るかもな?」

成る程、そういう考えもあるんだな。

「が、使い方次第でどうとでもなる」

と、師匠が侵入してきた魔獣に対し、光源魔法を使い魔獣を光らせてから斬り捨てる。魔獣そのものが灯りとなるのだが、正直、光る死体は気持ちの良いものでは無い、断面は夢に見そうだ。

この間も、師匠は魔獣を斬り倒して灯りにしている。


「しかし、魔獣がこんなに居るとはな。流石にキリが無い」

「昼過ぎまでは存在してなかった筈です。連絡が来た辺りでいきなり気配が増えたからな!ファイアーアロー!」

アレンさんとタモンさんが魔獣を倒しながら話す

「ほい!デカいの飛ばすよ!ファイアーボール!」

リィズさんのファイアーボールで魔獣数十匹が焼かれる。破壊魔法ではなく攻撃魔法なのか、魔獣にしか効果がなく、地面が焼けることも無い。使い分けるリィズさんの技量が凄い。

チームワークが良いのか、声を掛けなくとも連携をとって動いてる様で、隙を突いてカイラスさんが槍を振り回し前に出る。

魔獣も隙を突いてカイラスさんに掛かっていくが、小屋の上のロンドさんに射られ倒される。

ニールさんは補助魔法をラインさんに掛けたところで、ラインさんが更に前に出て戦斧で屠り、魔獣たちを圧倒し始める。そうして、何とか戦線を移動して、遂に防護柵外に魔獣たちを押し返す事に成功した。

既に200匹以上の魔獣を倒しているのだが、見える魔獣の数も戦意も減らない。防護柵内の魔獣の死体を壁として侵入を阻んでいる。柵を活用出来るようになり、前衛3人は大分余裕が出来たようだ。

柵内の雪の大半は魔獣の血で融けているが、血で滑る可能性がある。

「埒があかないな。トモキウス、ファイアーアローは使えそうか?」

師匠が聴いてくるが、タモンさんのようにまとめて数十本の魔法の矢が出せるかは分からない。

ファイアーボールの方がと思ったが、リィズさんの様に制御する自信が無く、無駄な思考で躊躇してしまった。

「やるだけやってみろ」

師匠にこう言われては、やるしかない。

敵は柵の外にいるし、ダメ元だと、脳内で炎の矢を想像し、矢の数を増やす……が、イメージを変える。

ショートソードを鞘に収め、両手を広げ魔力を集めて練り、力ある言葉を放つ!

「雷神の槍!」

数十本の槍の形をしたゴンブトな雷が魔獣たちに向けて飛ぶ。雷は魔獣に当たると近くの魔獣に雷が拡散し、雷に触れた魔獣は感電したのか光って燃えた。

瞬く間に魔獣の群れが感電し、燃え上がる。

「よし!上手くいった!」

思わず、ガッツポーズを取る。

「規格外のバカ弟子め」

後ろから来た師匠は、ちょっと微妙な笑顔をして近づいて来た。手を出して来た師匠に、頭を撫でられるかと思いきや、頭を掴まれ揺さ振られた。

「や~め~て~く~だ~さ~い~」

師匠にそう言ってみるが、まだ揺らされる。

神の目が何かを見つけたのか、教えてくれる。忘れた頃にやって来るのか。反応した方向を神の目で視ると、監視塔の半ばにソレはいた。

「師匠!悪魔、悪魔が居ます!」

本来なら、とっくに参戦していてもおかしくない距離に居た悪魔だが、様子見でもしていたのか?神の目さん、もっと早く教えてくれよ! 

「ミツケタ…ミツケタ……」

なんか、子供のような大人のような不思議な声であり、声の聞こえた方を見上げると、監視塔の中腹辺りを飛んでいる人型の異形が居た。

そして悪魔は1人では無く、神の目で視た最初に確認した悪魔を中心に5人もいた。

悪魔を見た師匠が顔を歪める。

「魔人も一緒か!」

吐き捨てるように言った。

数年間一緒にいて、初めて見る師匠の憎悪の表情には驚いた。

そんな中、悪魔達が降りてくる。

「ミツケタ…ミツケタ…」

中央の悪魔が言っているのが分かるが、薄気味悪さが凄まじい。

中央の悪魔が放つ僕とは圧倒的な力の差を感じる。師匠から感じる威圧感の方が凄い。


「不味いですね。あちらに加勢するどころか」

「まだこちらが加勢を頼みたい状態だからな」

ニールとタモンが悪魔と対峙しているシファ等を見るともなしに話す。

「剣聖に期待するしか無いが、悪魔が5体とか、洒落にならん」

カイラスがまとめて数匹の魔獣を弾き飛ばす。

「リィズが応援すれば、少年は張り切るかもな」

ラインが珍しく軽口をたたく。

「あのね、トモ君を戦力として数えないって…」

リィズが反論しようとするが、自身も当てにし始めている事に思い当たり、口をつぐむ。

「しかし、参ったね。最悪の場合も考えないとな」

ロンドが矢を放ち、アレンにその時が来る前の判断を促す。

「ですね、リィズと少年、ロンドですかね」

トルネオが普通に応える。皆の意見も同じだろう。

「だな。剣聖次第だが、最悪、リィズ、ロンドだけになるな」

アレンが本当の最悪の場合の王都まで逃がす人員を言う。

本当に剣聖次第である。剣聖が、悪魔相手に何処まで戦えるか分からないが、剣聖が悪魔に敗れるようなら、直ぐさまロンド、リィズを逃がす。若いが有望なリィズと危機管理能力が高く、様々な能力を持ち経験豊富なロンドの2人なら、王都までは逃げられるだろう。出来れば、少年も生かしたい。あの戦闘能力の高さは、ここで失うには惜しい。

いずれにせよ、お互い頑張るしかないのだろう。今日はずっと頑張っているんだがな。アレンはそう思う。

最期の踏ん張りは、娘の為かと思うと、疲れた体に不思議と力が湧いてくる。

まだまだ最期では無いし、生き残る気は満々だ。近くの仲間の顔をチラッと見ると、やはり生き残る、やる気満々な顔ばかりだ。最高の仲間、最高のチームだろう。アレンはチームが生き残る為、頭をフル回転させる。


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