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更正王女様シリーズ

更正王女様8歳が参る!

作者: 秋月煉

長らくお待たせ致しました!

8歳の王女様の活躍を、お楽しみに!

昔むかし、遠い遠い国に、知恵の神様から加護を頂いた、可愛らしいお姫様が、家族や国民と平和に暮らしておりました。勿論、まわりの国とも仲良しです。お姫様は、流石と言うべきか、とても頭が良く、聡明な方でした。その為、5歳の時に見事、問題児を更正させたとして、皆からは親しみと尊敬を持って、『更正王女様』と呼ばれておりました。

これは、お姫様の8歳のお誕生日パーティーで起きた、珍事件をまとめたお話です。はてさて、お転婆なお姫様は、今回はどんな活躍を見せてくれるのでしょうか?


◇◇◇◇◇


皆様、ごきげんよう。この国の王女、ティナリアですわ。今日、8歳のお誕生日を迎えましたの。

なので、張り切った家族や家臣達が、立派なパーティーを開いてくれました。私は未成年なので、今日のパーティーは、夕方から始まる早い時間の舞踏会スタイルです。私のお茶会に呼んだ同年代の皆さんや、貴族の皆様が、お祝いに来てくれました!

私、とても嬉しいです!


「お父様、お母様、お兄様方、そして、家臣の皆さん、今日は素敵なパーティーを開いてくれて、ありがとうございます! 私、とても嬉しいです!」


ちゃんとお礼を言いました。沢山の贈り物の中には、珍しい物も多くて、飽きる事がありません。楽しい時間の最中です。

・・・・・しかし、私の楽しみにしていた行事は、何かがあるのは、前回までに学びました。はい、やはり、何か騒動は起きてくれたようです。せめて、せめて! 別の日にして下さいませ!!


「何事かしら? 騒々しいわね・・・」


初めに気付いたのは、お母様でした。私は、お父様達がいる玉座から下に降りて、お友達とお話をしていました。公爵家のご令嬢です。


「姫様、私が見て参りますわ」


彼女はそう言ってくれましたが、それを止め、私が行く事にしました。だって、私のお誕生日パーティーに、何やら騒動を持ち込んだのです。顔を見ねば、気が済みません!

行く途中、皆様、小さな私に気付いて、道を開いてくれました。まだまだ小さな私に気付き、カーテシーや礼をしてさりげなく道を開く皆様は、流石というしかありません。尊敬しますわ。そして、着いてすぐ、思わず口を開きました。


「貴殿方・・・何をしてますの・・・・・?」


思わず、そう聞いてしまった私は、悪くないと思いますの。だって、目の前の状況は、首を傾げてしまう、おかしな事態になっていましたから。

そこには、三人の人物が居ました。

一人は泣きそうにしながら、必死で二人を止めようとしている、顔色の悪い女性。多分、年の頃は、15歳かそれくらいかしら? 私に気付いて、申し訳ないと言うように、泣きながらカーテシーをしました。

それに比べ、男性二人は、頭に血が登っていたようで、私にも気付いていませんわ・・・。

お互いに、鼻血やら、切り傷やら、服装までも乱れております。

これ以上、ここで騒がれても迷惑です。


「衛兵、彼等を別室へ・・・そちらのご令嬢もよ、わたくし自ら、裁定しますわ」


せっかくのパーティーを、邪魔されたのです。勿論、わたくしの鬱憤を晴らしてみせますわ! 因みに、父にも許可をもらいました。勝手にやったら、叱られてしまいますわ。父は笑顔でしたが、母共々、目が笑っていませんでしたわ・・・。気を付けねば、血の雨がふりそうですわ! ブルッとしましたもの。お兄様方や婚約者のお姉様方もいい笑顔でした。・・・見なかった事に致します。

さて、衛兵により別室へ連れてこられた三人ですが、ご令嬢だけが、意味を理解しているのでしょう。真っ青になりながら、私へ頭を下げています。えぇ、話次第では、彼女を守ってあげるつもりです。礼儀正しい相手は、嫌いではありませんわ。

・・・・・あくまでも、話次第ですけれど。


「さて、頭は少しは冷えまして?」


冷ややかに言ってみたら、不思議な事に、片方から睨み付けられました。あら、わたくし、王女でしてよ??

ーーーーー不敬罪で、一度、牢屋に入れてやろうかしら?


「ふんっ、私は公爵家の者だぞ? 何故に、ここへ連れてこられたのだ? 大体、こいつらが悪いんだろうがっ!」


?? はて、公爵家に、こんな馬鹿はいたかしら?? 公爵家のところは、うちに遊びに来る事もありますし、大体の皆様は知っていましたが、彼は見たことありませんわ。


「何を言う! 妹に散々、付きまとった挙げ句に、暴力を振るう等、貴殿こそ、紳士の風上にもおけんだろう!」


あら、こちらは彼女の御兄様でしたのね。なるほど、色彩や顔立ちが良く似ておりますわ。

でもこれ、素直に聞いていいものかしら?? 明らかに、視点により見え方は変わってしまいますし・・・。

事情が分かりませんが、取り敢えず。


「今日はどういった場であるのか、貴殿方は分かっているのかしら?」


王家の特別なパーティーで、騒動を起こしたのです。明らかに、家の単位で処罰ものですわ。今回に限っては、間違いなく、処罰はされるでしょうが・・・気になる事を言っていましたね?

が、私が考え事をしているうちに、自称公爵子息がやらかしました。


「ふんっ、下っぱ風情が誰に話をしている? うちは、貴様らより上の公爵家だぞ? この私が望んでやったのだ、ありがたく思うのが筋だろう」


「あら、貴方こそ誰に許可を得て言ってますの? わたくしは、王家の姫です、貴方には発言を許可してませんわ」


言えば、良く分かっていないのか、男は怪訝そうに私を見ています。はぁぁぁ、兄妹の方は、ちゃんと理解して、真っ青になりながら、頭を下げていますのに・・・。


「衛兵、話になりません、彼らのご両親を至急、連れてきてちょうだい」


私に言われた衛兵が、敬礼と共に凄まじい早さで廊下へ向かっていきました。

ふぅ、まったく、昨今の親はどうなっているのでしょう? 王族をうやまう事すら出来ないお馬鹿さんが居るなんて、信じられませんわ。

とはいえ、来るまでに時間がかかりそうなので、多分、被害者かもしれない、まともに話せそうな兄妹に話を聞きます。

お馬鹿さん? 無視ですわ、無視!! バカに使う時間が勿体ないですし、私、まだ理由が分かりませんの。ならば、こちらに聞くのが筋と言うもの。

お馬鹿さんのお話は、親が来てからに致しますわ。こんなやつ、お馬鹿さんで十分でしょう? 名前すら名乗っていないのですから。


「さて、私に説明して下さるかしら?」


彼等は、私を知っていたようで、ちゃんと、カーテシーと紳士の挨拶をしてくれました。顔色は悪いですが、うん、やっぱりまともです。紳士の方は、怪我をしていますが、治療は後からにしてもらいます。・・・ちょっと怒っているのですわ、私。


「お騒がせしてしまい、申し訳ありません、私は、北の辺境伯家の嫡男、アルフレッドと申します、此方は妹のマリーナです、本日は、我々の問題で姫君の誕生日パーティーを邪魔してしまい、本当に申し訳ありません、この責めは如何様いかようにも」


妹さんも頭を下げて、恭順の意を示しています。口を挟みたそうにはしていますが、お口は閉じたまま。うん。躾は立派ですわ。


「あぁ・・・、あなた方のご両親には会った事がありますわ、とても立派な方々ですわね、私、貴方のところの蜂蜜が大好きなんですの・・・・・でも一体、この騒ぎはどうしましたの?」


こんなに躾がなっているのに、おかしな気がしますわ。やはり原因は、いつの間にか衛兵に両腕を捕まれている、お馬鹿さんにあるようです。


「・・・実は、少し前のパーティーで、此方の公爵家の若君が、妹を見初めて言い寄っていたそうなんですか・・・あまりにも、目に余ると申しますか・・・」


言いにくそうに、彼が言いますが、確かに先程の態度を見る限り、兄君が庇おうとするのは、分かりますわ。躾のなっていないバカ息子を、パーティーに出すなんて!! 公爵家には、こんなバカは居ないと思ってましたわ・・・。


「姫様! ご家族をお連れしました!」


声の方を見れば、そこには公爵夫妻と、彼の兄らしい二人の男性がいました。あら? 確か、東の公爵と呼ばれる方でしたわね。息子は二人しか居ないはずですわよね。ならば、彼は一体・・・?


「ひっ、姫様!! お呼びと伺いました!」


あら? 何かを聞いたのか、かなり顔色が悪いですわ。ついでに、バカがやらかしました。


「父上、母上、この無礼な娘とそいつらに言って下さい! うちは国内で一番の公爵家であり、とやかく言われる筋合いはないと!」


・・・・・辺りが、シーンとなった瞬間でしたわ。ついでに、公爵夫人が耐えきれなくなり、倒れてしまいましたわ。


「「母上!?」」


二人の息子が、母親に付き添います。夫人には、休憩用のソファに座って頂きました。ご婦人には、刺激が強かったようです。一緒にいた公爵様は、自称公爵子息に向かって、ツカツカ歩くと、ガシッと肩を掴んで前後に揺さぶりだしました。


「馬鹿はお前だっ!! 今回は姫様のお誕生日会だと、あれだけ説明しただろうがっ!! いい年をして、お前の頭には綿でも詰まっているのかっ!? えぇ!? 分かっているのか!! 最初に挨拶しただろうがっ!!」


頭に来ているのか、公爵様は止まりません。と、夫人に付き添っていた二人が、参戦するようです。


「父上・・・、こいつの頭に有るわけ無いでしょう・・・、勉強は逃げる、剣はやらない、人の話すらまともに聞けない、さすが、我が公爵家の恥」


「今日だって、本当は家に置いていくつもりだったのに、あいつらが余計な真似をして、表に出すからこうなるのです、さっさと出家でもさせて、強制的に穏やかな暮らしにさせれば良かったのですよ」


・・・・・はて?? 東の公爵家は、立派な家と聞いていましたが、違ったのでしょうか?

と、私の困惑に気付いたらしい、兄弟のお二人が、ガバリと勢い良く頭を下げます。 


「「申し訳ありません、姫様!」」


「・・・・・お二人の誠意は分かりました、ところで、彼は一体、東の公爵家とどのような関わりを・・・?」


本当に申し訳ありませんが、わたくし、彼の立場が今一分からないのです。口を開いたのは、公爵様です。傍らには目を回しているらしい、馬鹿がいますが、今は無視です。話が進みませんわ。


「・・・・・まぁ、無理もありますまい、姫様他、王家の皆様にご迷惑にならないように、領地に置いていたのですから」


彼は、公爵様と先程倒れた夫人との間に生まれた正真正銘の息子であり、此方の立派な兄弟二人とも血の繋がった実の弟だそうです・・・。


「末っ子であり、体が弱かった事もあり、領地にいる叔父夫婦に世話をお願いしていたのですが、甘やかしていたらしく、気付いた頃には、この有り様で・・・今日も置いていくつもりだったのですが、叔父夫婦も本日は呼ばれており、連れてきたのです・・・・・苦渋の選択でした」


父親にここまで言わしめる息子というのも、中々に凄いと思いますわ。


「取り敢えず、彼の事は分かりましたわ、お宅の三男で宜しいですのね?」


若干、頭痛がしますが、仕方ありませんわ。わたくしが、これを裁定せねばいけませんし。父がやったら、政治の駆け引きになりそうですわね。


「あの、姫様・・・三男ではなく、五男です」


・・・・・そうですの。確かにお兄さん二人とは、年が離れてますわね。


「三男と四男は、子供の居ない親戚に養子に行きましたので」


そういえば、子沢山のお宅でしたわね。娘さんも三人いらっしゃいますし。皆様、優秀と聞きますわ。


「・・・して、姫様、うちのコレが、何をやらかしたのでしょうか?」


不安そうな東の公爵様には悪いですが、諦めて頂きましょう。既にコレ扱いですわ、バカは。私は辺境伯家の兄妹を紹介し、説明をしていきます。・・・・・話が進むにつれて、東の公爵様と夫人、兄二人の顔色が更に悪くなっていきます・・・・・。とうとう、夫人はまた倒れてしまいました。

ですわよねぇ?

普段の場所でも、直ぐに噂になるようなゴシップですのに、今回は失態が絶対に許されない、王族のお誕生日会・・・。私、これを裁定しますの・・・?


「さて、裁定をせねばなりません・・・、まず、辺境伯の御兄妹ですが、巻き込まれた弱者とは致しましょう、妹さんは被害者ですもの、自宅で療養、お兄さんは1日貴族用の牢で頭を冷やしなさい、辺境伯家へは特上の蜂蜜を献上することで、今回は許しますわ」


公爵家のバカのやらかしが原因ですが、流石に流血騒ぎは不味いのです。辺境伯家と揉めないためにも、納得の罰でしょう? 特上の蜂蜜は、希少種からしか取れないのです。辺境伯もまれにしか取れないため、大変貴重なのですから。

それに、私が先に裁定すれば、父よりも優しく出来ますもの。

次は公爵家ですが、こちらは周りが不憫ですわ。完璧に、巻き込まれた感がありますが、やはり、しっかりとして頂かなくては。


「公爵閣下は、息子の監督不行き届きですわ、ですから、御子息をしっかり躾て下さいませ? 叔父夫婦は爵位をお持ちなら、息子に譲らせて隠居させなさい、彼らが原因ですもの・・・・・そうね、ご夫婦にはしばらくの謹慎を言い渡しますわ、お兄様方もご両親を補佐し、しばらくの謹慎にしますわ」


「・・・・・っ!! はっ! 姫様のご厚意、心よりお礼申し上げます! このような事が二度と起きぬように、我が一族末代までの家訓と致します!」


公爵一家・・・バカ以外ですわよ? は、理解したのか、平伏せんばかりに、頭を下げています。辺境伯のところの兄妹も理解できたのか、同じように頭を下げています。

問題は、バカ本人ですわね・・・。


「彼はしばらく、罪人用の牢屋に入れなさい、その後、ご家族で躾なさい・・・他に出しても、迷惑でしてよ」


それでも、ダメかしらね? 躾の成っていない駄犬ですもの。恐らく、死ぬまで家から出れなくなるでしょうが、社交界にも居場所はないでしょう。こんなやらかす存在、恐ろしくて出せませんもの。幸い、優秀な兄は居るようですし。


「殺す事は許しませんわよ、あなた方が蒔いた種です、最後まで世話なさい」


「・・・畏まりました」


頭を下げた公爵は、目に力がありませんでした。とはいえ、頑張ってはくれるでしょう。

その後、パーティーに戻ると、父には叱られましたし、母や兄達からも心配されてしまいました。

もうっ! わたくしは姫でしてよ? ちゃんと沙汰を下せましたわ!

とはいえ、誕生日パーティーは盛大に幕を閉じましたわ。



◇◇◇◇◇



その後のお話を致しましょう。

お誕生日パーティーを、盛大に祝った姫様は、大層ご機嫌で楽しかったと、日記には記載されている。

なお、東の公爵家では、五男の教育に力を入れ、常識を頭に入れる事には成功し、彼は生涯に渡り独身のまま、公爵家の管轄で管理されて生活をしたとの事。彼の死後、日記が発見され、後に今後の教育に必要とされ、書籍化されると、瞬く間にベストセラーとかした。愚か者に成らぬための教育本として、今も教師や生徒達は必ず読む本となっている。

後に、東の公爵家は教育の家とされ、数多くの教師を排出した家系として、名を馳せる事になる。

被害者の令嬢は、後に素敵な方と廻り合い、幸せに暮らしたそうだ。兄は、婚約者と共に、国境を守り続け、生涯を閉じたと歴史では言われている。


これは、遠い遠い国の、更正王女様と呼ばれる方の物語ーーーーー。

お読み頂きまして、ありがとうございますm(_ _)m

作者の秋月煉です。

こちらは、少し前に書き上げていたのですが、ちょっとタイミングが合わなくて、出せていなかった作品です。

このあと、勝手をした王女様は、しこたま叱られましたが、多分、ご両親は内心、ビックリしていたでしょうね。


王様:わしより、裁定うまくない? 凄くない? うちの娘!


お妃様:うちの子凄いわ! さすが、私の娘!


内心、フィーバーしてそう(笑)

今回一番可哀想なのは、公爵様達かな? いや、知らぬ間に巻き込まれた、辺境伯様かも?


他にも書いておりますので、宜しければ、そちらもどうぞ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新作短編、お疲れさまです。 ティナリア王女8歳の天真爛漫、可愛らしい童話……と思いきや地獄絵図(失礼w)な誕生パーティとなりました。 そして後日談がおもしろいですねw >なお、東の公爵家…
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