96GF ソドムへの道『文化祭』
月天の計画。その全貌は、巨大な月を形成し、人口が集中しているところに落とすことで、大量の犠牲者を出すことであった。実際、それは大阪市でも行っており、270万人を一気に殺害した。大阪市の時は大量のロストエネルギーを直接取り込むことができたため、すぐに巨大な月を落とすことが出来たのだが、今回は違った。大量のロストエネルギーを直接取り込むポイントがないため、貯蓄する必要があった。最小限のロストエネルギーだけで済ませ、限界値ギリギリまで貯蓄するのには時間がかかった。そのため、月天は考えた。「人造人間を殺し、人造人間を形成しているロストエネルギーを全て取り込む方が、ロストエネルギーが溜まるのが早い」のだと。月天は人造人間を集めるために、ビルドと繋がりがあった鍵政組を利用し、所有していた人造人間を全て吸収した。そして、鍵政組のトップである鍵政 方俊を唆し、終焉の理計画を始動させた。火天は月天にこの計画を聞いた時、月天の目指しているところはどのなのかと聞いた。それに月天は、正直に答えた。「混沌とした世界の構築」、それが月天の目指すところであった。
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「これが月天の計画。まあちょっと月天の目指すところまで語っちゃったけど……」
「いえ、教えてくれてありがとうございます」
「じゃ、私の能力じゃあれを止めることはできない。その手助けすらもできない」
火天は慧彼達の横を通り、ペデストリアンデッキから降りようとした。だが、慧彼はそんな火天の肩に手を置き、その場に引き止めた。
「私達は絶対に月天を倒す。だから、火天は街に蔓延ってる人造人間を殲滅して」
慧彼はいつもの気楽な顔ではなく、真剣な表情で火天の顔を見た。その顔には謎の説得力があり、素直に従うしかなかった。
「わ、わかった……」
火天の口から了承の言葉が出た瞬間、慧彼は火天の肩を叩いて振り返った。
「よし、月天自体は白夜達が倒すはず。その動きもしてるみたいだしね」
「そうですね。では、私たちの担当は……」
「あのバカみたいにでかい月の処分だね」
「落とす前に月天を倒した場合、ロストエネルギーを吸っていけば処分できます。ですが、倒す前に落とされた場合、落ちてくる月をどうにかして仙台市に被害が出ないように処分しないといけません……」
「あれをどうにかしてって……。……無理じゃない?」
火天は半ば諦めたようなことを言った。その発言に慧彼は反応した。
「いや、できる。……多分だけど」
「多分って……」
「方法を思いついたんですか?」
「まあ、だいたいはね」
慧彼は、盾羽と火天に被害が出ないように処分する方法を話した。
「盾羽、あの高さくらいまで盾って連続で出せる?」
「まあ……、余裕ですね」
「わかった。じゃあ、盾羽の出す盾を足場にして、それを私が伝って上へ」
「上に行ったらどうするの?」
火天は疑問に思って聞いてしまった。実際、慧彼の能力を知っており、「処刑執行」では何も出来ないのではと思った。だが、慧彼の能力は火天の思っている以上に応用が利いた。
「ガベル作ってハンマー替わりに海に叩き落とす」
(考えぶっ飛んでるよこの子……。ガベルって何する道具か知ってる?)
火天は慧彼の思考に驚いた。だが、考えているうちにこれが当たり前なのかと痛感した。実際、自分もやっていることとそんなに変わらないからだ。炎を冷やして剣にできるなら、ガベルをハンマー替わりにすることなど造作もない。戦闘をしていく内に、発想というものはどんどん広がっていくものなのである。
「じゃあ、私は人造人間の殲滅に行くよ」
「月を海にぶち込んだらここに来るから、それに合わせてここに来て」
「あ、うん……」
慧彼の言っていることがどんどん悪化していく様を実感した火天は、人造人間の殲滅に向かった。
「とりあえず、白夜達が倒すか月が落下するまで待機だね」
「そうですね。無理に攻める必要もありませんし……」
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(まだだ……)
月天は、月がどんどん膨張していく様を間近で見ながら、月を落とすタイミングを見計らっていた。月の大きさも大事なのだが、風の強さ、風の向き、気圧、それのかなり小さな位まで見極めなければならなかった。そのため、中々落とすことが出来なかった。
(僕は運が悪いんでしょうかね?)
集中して観測していくと、風の強さ、風の向き、気圧が少しずつ理想体に近づいてきた。風速0.037m/s、南西、1014.5879256hPaが理想体なのに対し、現在は風速0.040m/s、南西、1014.5879290hPaと、ほぼ同じ様な値になっていた。
(このタイミング……)
自動迎撃のセンサーを球状に展開していた月天は、ロストエネルギーに戻して月に併合した。
(さぁ……、消し飛べ!!)
月天は月を仙台市に向けて落とした。そして、それと同時に月天は核をロストエネルギーの銃弾で貫かれた。月天は「何故だ?」と言わんばかりの顔をして、撃たれた方向を向いた。すると、そこにはスナイパーライフルのような銃を持った者と、羅刹天がいた。
(羅刹天が……)
「どれだけ、私達の邪魔をすれば気が済むんだァ!!」




